「埋蔵金」使っちゃっても大丈夫?

今朝の日経によれば、行政支出総点検会議が雇用保険の国庫負担廃止と保険料引き下げを求めるとのことです。

 政府の行政支出総点検会議(座長・茂木友三郎キッコーマン会長)は十六日、雇用保険制度の国庫負担廃止や雇用保険料の引き下げなどを柱とした中間報告をまとめた。十一月末にも各省庁ごとに特別会計予算や公益法人などの無駄について指摘事項をまとめ、年末に編成する二〇〇九年度予算案に反映し、公益法人向け支出の三割削減などにつなげる。
 一部で「埋蔵金」と呼ばれ、景気対策などの財源として注目される特別会計の積立金について重点的に点検。特に労働保険特別会計のうち、年間約千六百億円(〇八年度)の国費を投じている「失業等給付」の積立金は過去最高水準の約五兆四千億円に達するとし「厳しい財政事情を踏まえると国費投入は行うべきではない」と明記した。雇用保険料の引き下げも提案した。
(平成20年10月17日付日本経済新聞朝刊から)

雇用保険の財政は、好景気で失業給付が減れば積立金が増え、不況になって失業給付が増えればその積立金を取り崩して対応しているわけで、このところはしばらく前まで好況が続きましたから積立金が積み上がるのも当然です。で、これからは景気後退が見込まれているわけで、となると失業給付も増加が目されるわけですが、本当に積立金を景気対策でばらまいちゃっていいんでしょうか。90年代後半以降、失業給付が急増して積立金が底をつきかけて大騒ぎしたことをお忘れでなければいいのですが…。雇用保険料についても、こうした循環的要因に対応するために弾力条項が設けられているわけですが…。あるいは、とりあえず雇用保険料引き下げをあてがって企業を黙らせておいて積立金を費消し、いざ足りなくなったらまた保険料を引き上げればいいや、と安易に考えているのかもしれませんが、失業給付の財源となる保険料は労使折半ですから、それは企業だけではなく勤労者、選挙民にも負担を強いる結果になるわけですが…。
国庫負担廃止は、それはそれでありうる考え方だろうとは思います。一応、建前としては国も雇用政策を通じて雇用情勢に一定の責任を持つことを示すべく国庫負担が行われているということで、これももっともな理屈ですが、実際問題として先進諸国で失業給付に国庫を入れているのは日本くらいのものでしょう。
ただ、国庫負担をやめるのであれば、財源は労使が拠出する保険料だけになるわけですから、国が政策的に実施している給付(育児休業給付とか高年齢雇用継続給付金とか)は廃止して、雇用保険(失業保険)本来の目的である失業給付に特化するのが筋というものでしょう。