派遣法改正に関する連合事務局長談話

きのうの続きで、きょうは最近の労働政策に関する動向についての連合「事務局長談話」をみてみたいと思います。まずは、労働政策審議会が「労働者派遣制度の改正について」を建議したことに対する談話で、建議が出された9月24日に即日出されています。これまでも派遣法改正についてはさんざん取り上げてきましたが、これまで触れていなかったポイントもありますので、あらためて。
まずは、規制緩和から強化に向かった方向性を評価しています。

…違法派遣や日雇い派遣の問題など労働者派遣をめぐる深刻な状況や世論の高まりを受けて、労働者派遣法制定以降の規制緩和の流れに歯止めをかけ、一定の規制を行う建議となったことは、連合の運動の成果でもあり、前向きに受け止める。
http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/danwa/2008/20080924_1222233711.html、以下同じ))

続いて、個別規制への評価がきます。

 「報告」は、連合が禁止を求めてきた日雇い派遣を「原則禁止」とした。例外的に認める業務は18業務と、許容できる範囲に限定することができたが、「スポット派遣」への対応が必要である。また、グループ企業での派遣を8割以下とする規制は、妥当である。さらに、マージンに関する情報の公開が義務化されたことは、一歩前進である。派遣労働者が優良な派遣元を選択するための措置として有効に機能するよう、派遣労働者に対して個別の派遣料金の説明がなされるようにするべきである。

日雇い派遣とインハウス派遣については満足できる結果という評価のようですが、「グループ企業での派遣を8割以下とする規制は、妥当である。」なんてさらっとすませてしまって本当にいいんでしょうか。一応、定年後再雇用については規制の対象外になったようですが、育児などのためにいったん退職し、かつての勤め先の派遣子会社からグループ会社に派遣されて満足度高く働いている人たちは、下手をするとこれで失業しかねません。まあ、連合としてはそれでいいのだという整理なのでしょうが、本当に多くの派遣労働者のためになる法改正なのかどうか、連合が労働者の代表を自任するのであれば再考を促したいところですが…。あと、「スポット派遣」云々はよくわからないのですが、18業務であっても超短期は好ましくないということでしょうか。それこそ、通訳なんかはスポットにならざるを得ない部分が大きいのではないかと思うのですが…。「個別の料金説明」も、派遣会社としては相手をみながら料金設定し、トータルで収支があうようにやっているのでしょうから、言うほど簡単ではないでしょう。まあ、適切な形であれば情報量が増えることは好ましいので、ここは知恵の出しどころかもしれません。
さて、見解では続けて登録型派遣については前進がなかったことに不満を表明しています。

 一方、今回の見直しでは、登録型派遣について労働者保護につながる規制がほとんど打ち出されなかった。登録型派遣での問題点を把握し、登録型派遣の在り方や労働者保護について、引き続き検討すべきである。また、違法な派遣があった場合に、「行政が雇用申込みを勧告できる」との措置は問題であり、労働者の権利救済の観点から「直接雇用みなし規定」を導入すべきである。さらに、派遣先労働者との均等待遇原則を法律で明記することや、期間を定めないで雇用する派遣労働者について、事前面接等を原則可能にすることに関しては、不必要な情報収集や差別的な行為が行われることがないよう規制することが必要である。

登録型派遣についても、連合や役所の建前のためではなく、派遣労働者のための制度改正を検討してほしいものですが、それはそれとして。
連合としては、建設・港湾運送などの派遣禁止業務への派遣といった違法派遣を念頭に「直接雇用みなし規定」を主張しているのでしょうが、そういうものは別として、合法な職種で「そうとは知らずに派遣に来てもらったら実は違法業者だった」というようなケースまで企業に直接雇用を求めるのはさすがに行き過ぎでしょう。逆に、違法性を明らかに認識していながら派遣を受けていた場合などは、雇用期間は派遣期間と同じ、賃金は派遣会社から受け取る賃金と同じという直接雇用とみなすというのも一理ある考え方かもしれません。このあたりも知恵の出しどころでしょうが、マッチング改善という観点からは、建設・港湾運送でやはり禁止されている有料職業紹介を、弊害のない形になるよう適切な規制を加えつつ解禁していくことも考えられていいのかもしれません(リスクをともないそうではありますが)。
談話はさらに続けて「今後、建議を踏まえて、労働者派遣法改正法案要綱がまとめられることとなる。政治情勢は流動的だが、労働者派遣法改正法案の国会審議が速やかに行われ、労働者保護に実効性ある派遣法改正が実現することを期待する」と述べています。今後の政治情勢次第というところでしょうが、派遣労働者の失業防止という観点からも、実務的には十分な周知期間が必要ではないかと思われます。