韓国の定年延長

週末の日経新聞に、高齢者雇用に関する日韓比較調査の結果が報じられていました。

 日本経済新聞社は韓国の中央日報と共同で、日韓企業の高齢者雇用に関する調査を実施した。退職者の再雇用制度について、日本企業は「ある」が95%だったが、韓国企業は31%にとどまった。2007年以降、団塊世代の大量退職に直面した日本企業の方が人手不足の切迫感は強いが、日本を上回るスピードで少子化が進む韓国でも定年を延長する企業が増えるなど高齢者を活用する動きが広がっている。
 再雇用制度は定年前より低い給与水準で契約する場合が多く、企業にとっては定年延長よりコスト負担が少ない。日本企業のほとんどが、この制度を導入しており、再雇用する期間は「5-9年」(51%)が最も多かった。
 足元の人手不足感が日本より弱い韓国では、定年延長が高齢者雇用の主流になっている。過去3年以内に定年を延長した韓国企業は16%だが、日本企業は2%にとどまった。定年延長は再雇用に比べ企業のコスト負担は増すが、優秀な高齢者社員をつなぎ留める効果がある。
(平成20年6月1日付日本経済新聞朝刊から)

日本には改正高齢法があり、韓国にはないわけですから、まあそういうことですよねという記事なのですが、共同調査のパートナーである韓国紙「中央日報」も、日本語のウェブサイトでこの調査を報じていましたので備忘的にコピペしておきます。

 韓国と日本の企業は高齢労働者を雇用する方式に大きな違いがあることがわかった。
高齢化社会(65歳以上が人口比率7%以上)に突入した韓国の企業は、定年の延長、超高齢社会(65歳以上の人口が20%以上)の日本は、退職後、再雇用する企業が多かった。
これは「韓日高齢者雇用調査」の結果だ。調査は中央日報日本経済新聞が両国の主要企業211社(韓国86社、日本125社)を対象に5月から1カ月間に渡って行った。
調査の結果、韓国企業のうち2005年から現在までの3年間、定年を一度でも延長した会社は16.3%(14社)だった。日本は2.4%(3社)にすぎなかった。定年を延長しない企業のうち、定年の延長を計画している企業は韓国(22.2%)で、日本(9.2%)より多かった。日本企業の95.2%(119社)は退職者を再雇用する形式で高齢者を採用していた。退職者を再雇用する韓国企業は調査対象の31.4%(27社)だった。
三星経済研究所の李禎一(イ・ジョンイル)首席研究員は「日本は1998年に雇用安定法を改正し、定年を60歳に延長した」と説明し「それが50代の中盤が定年の韓国企業より、定年延長率が低い理由」だと話した。
また「日本は青年失業率が高いにもかかわらず、積極的に職に就こうとする人が少ないため、企業が人材を集めるのに苦労している」とし「韓国は就職希望者に大卒出身の高給取りの人材が多く、企業が新規採用を重視している」と分析した。
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=100772&servcode=400§code=400

「50代の中盤が定年の韓国企業」という一文がありますが、実際に日本のような定年年齢の規制のない韓国では若年定年を定める企業も多く、たとえば韓国を代表する大企業であるサムスン電子の定年は45歳という話を聞いたことがあります(だいぶ以前なので今はもっと延長されているかもしれません)。同じ中央日報のサイトにはこんな記事も紹介されています。

多くの会社員が、自分の定年年齢を45.5歳に予測していることが、調査により分かった。就職情報サイトのインクルートが、会社員3876人を対象に「予想定年」と「退職形態」を調べた。
年齢層が低いほど予想定年も早い。年齢別の予想定年は、20代が38.5歳、30代は45歳、40代は52.8歳、50代以上が61.8歳だった。男性よりは女性の予想定年が早く、男性の予想定年が平均47.1歳、女性が39.4歳だった。また「希望退職したい」と答えた回答者は、20代が67%だったが、50代以上の回答者では「定年退職を希望する」との回答が30%で最も多かった。
回答者の半分以上(56.3%)が自発的に退職したい、と答えた。インクルートのイ・クァンソク代表は「早期退職や高齢化が進み、低年齢であるほど早くから退職を準備し、第2の人生に備えようとする傾向がある」と分析した。
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=88313&servcode=400§code=410

要するに、企業が決めたある年齢=定年に到達した時点で、引き続き雇うか退職してもらうかを企業が決められるというわけですね。予想する、ということは、定年が変更されたりすることもあるのでしょうか。年代別の回答をみると、いったん定年に達して引き続き雇われると、また新たな定年が設定されるということが行われているのかもしれません。
元に戻って、今回の日韓調査のさらに詳しい解説も中央日報紙のサイトにありました。

 ソン・ジンホさん(59)は、昨年末、現代重工業で30年間、同じ釜の飯を食べてきた633人の仲間とともに蔚山現代ホテルで定年退任式を行った。彼は定年後にも現代重工業に出勤し、これまでしてきた仕事をしている。一緒に退職した同僚250人も同じだ。現代重工業は今年初、彼らを嘱託職員として再雇用した。同社キム・ジョンウク人事労務担当常務は「退職する社員たちの技術とノウハウをずっと活用し、熟練工に対する労働力難も減らせるなどメリットが多い」と話す。嘱託職の勤労契約期間は1年だ。大きな欠格事由さえなければ契約は更新される。賃金は退職前の70%台だ。ソンさんは「再雇用された後、会社に対する忠誠心も高くなって、ますます熱心に働くようになる」と話した。
急速な高齢化で若い層の勤労人力が減っているが、それに対して対策を立てる国内企業は多くない。三星経済研究所は昨年8月企業の主要勤労人力である25〜54歳年齢層が2009年から減少し、企業役員の高齢化も急速に先に進むものと見通した。実際に40歳以上の従業員の比重は1993年28.3%から2005年38.2%と10ポイントも増えた。
中央日報日本経済新聞が共同調査した結果でも韓国企業は日本企業に比べ、高齢の勤労者を活用するか、別な働き口に就けるように配慮する姿勢は低かった。
◇人件費負担減らして定年延長=調査対象韓国企業の99.5%が55〜60歳を定年としていることがわかった。それさえもこの3年間に、定年を延ばしたばかりの企業(16.3%)が多かった。2週間、労働部高齢者雇用課長は「賃金を減らす代わりに定年を延ばす賃金ピーク制を活用する企業が増えている」とし「勤労条件をそのまま維持して定年を延ばす企業は極少数」と言った。
日本企業は98年改定された雇用安定法によって、ほとんど60歳を定年としている。2006年には同じ法を改正し▽定年65歳に延長▽定年制度廃止▽再雇用−−など三種類の案のうち、1つを義務的に選ぶことにした。すでに定年を60代まで延ばした企業が多かったからか、65歳に延ばした日本の企業は調査対象の2.4%(3社)にとどまった。カンイック大韓高齢人力開発院事業開発チーム長は「退職金のような人件費に対する負担から韓日企業が定年延長を忌避するようだ」と話した。
◇再雇用は活性化=韓国は企業3社のうち1社、日本は大部分の企業が再雇用制度を施行していることがわかった。程度の差はあるが、両国の企業は再雇用制度に魅力を感じている。
再雇用された勤労者に対する満足度も高い。韓国企業の44.2%、日本企業の79.4%が退職勤労者に対して満足(重複回答)していると回答した。両国企業とも技術とノウハウを企業に伝授して活用することができるからだという回答が圧倒的に多かった。
キム・ジョンハン韓国労働研究院研究委員は「再雇用制度は正規職より低い賃金で熟練工の技術を活用しながら毎年契約を更新するため、雇用の柔軟性も確保することができるメリットがある」とし「特に超高齢社会である日本は、これを好む傾向が強く、韓国企業にも示唆するところが大きい」と述べた。
◇再就職支援に出る企業=KTは2005年10月“ライフプラン”制度を取り入れた。退職後、職員たちの生活安定をはかるために会社が役員たちの経歴管理を支援してくれる制度だ。退職が近い人には創業を支援したり、再就職をあっせんしたりする。財テク管理法まで講義する。オンラインサイト(www.ktlifeplan.com)では退職者たちの近況も知らせ、彼らの経験を職員たちと共有するようにした。
今回の調査で退職後、人生サポートプログラムを運営する韓国企業は26.7%(23社)だった。日本は57.6%(72社)で韓国の2倍だった。イ・ジョンイル三星経済研究所首席研究員は「日本は大企業と中小企業間の再就職連携システムがよく構築されていることに反し、韓国はほとんどない」とし「労働市場での再就職システム開発が重要だ」と話している。
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=100794&servcode=400§code=400

こうしてみると、日本企業が60歳定年延長に取り組んだ昭和40年代後半(くらいだと思うのですが)に似ているような感じもします。ときに、中央日報紙は高齢法を「雇用安定法」という書き方をしていて、ややまぎらわしいですね。