採用活動早くもヤマ場

5日の日経新聞から。

 二〇〇九年春の新卒者の採用活動が早くもヤマ場を迎えている。日本経済新聞社と就職情報サービス会社のディスコ(東京・文京)が実施した「学生アンケート調査」によると、約六割の学生が四月下旬までに事実上の内定となる「内々定」を得ていた。
 日本経団連は三月末まで選考活動の自粛を加盟企業に呼びかけているが、解禁から一カ月弱で過半数の学生が内々定を得るなど「売り手市場」が続いている。
 調査によると四月下旬時点で「志望企業から内々定を得ている」学生が五六・八%いた。最初に内々定を得た時期については、採用活動が解禁になった直後の「四月上旬」が二八・九%と最も多く、「四月中旬」(一七・五%)と「四月下旬」(三・七%)を合わせると、四月が五〇・一%と過半数を占めた。
 一方で、解禁前の自粛期間である「三月下旬」に内々定を得た学生も二〇・三%に達した。企業を取り巻く経営環境は不透明感を強めているが、労働人口の減少を見越した企業の採用意欲は依然として旺盛。採用活動の現場では「売り手市場」が続いており、新卒者が内々定を得る時期は年々、早まっている。
 もっとも、学生は最終的に入社する企業の決定には慎重だ。今回の調査でも、内々定を得た学生の中で「入社する企業も決まっている」と答えた割合は二九・三%にとどまった。
 最近の学生は就職活動で「売り手市場」を最大限に活用し、「まず内々定を一つ確保した上で、本命の志望企業の就職活動に臨む場合が多い」(ディスコ)。このため土壇場での辞退者も増える傾向にあり、辞退者を想定して実際の採用枠より多めに内々定を出す企業もある。
(平成20年5月5日付日本経済新聞朝刊から)

経団連は毎年、3月以前の選考活動の自粛などを定めた「倫理憲章」を作成し、それに賛同する企業名を機関紙で公表していますが、まあこれはあくまで自主参加ですから、わが社はそんなの知らないよ、と言われればそれまでのことでしょう。かつての「就職協定」の時代からそうでしたが、時期は違いこそすれ、「解禁」日を過ぎるとどっと内定が出たり、あるいは解禁日にいわゆる「拘束」が行われたりということが多かれ少なかれ行われてきたわけで、ということは事実上の選考活動は解禁日以前から行われてきたということでしょう。
そういう意味では「フライング」をなくすことは無理でしょうが、とはいえ本当に3年生のうちから就活に出精するというのが本当にいいのかどうかは別問題です。内定が出てももっといい就職先を求めて就活を続けるという人は一定割合いるでしょうから、就活が早く始まれば始まるほど長期化するというのは想像しやすいところです。となると、結局終わるのは始まる時期にかかわらず同じような時期になるでしょうから、早く始まるほど大学での勉強などにさく時間は少なくなることになります。
もちろん、新卒就職というのは(こと日本では特に)人生の一大事ですから、ある程度時間をかけてじっくり取り組むのも大事だという考え方もあるでしょうし、たしかに1ヶ月、2ヶ月の短期決戦であわただしく決めてもいいのかという気もします(そういう意味では、高校新卒の就職は期間が短くてすこし気の毒な感じはあります)。また、早く決まればその就職先をふまえて効率的な勉強ができるじゃないか、という意見もあるわけで、必ずしも早いこと、長いことが悪いというわけでもないでしょう。ルールを決めたはいいけれど、結局ルール破りをするものが得をするというのではまずいわけですが(就職協定がなくなったのもそんな理由だったと記憶)、まあ、こんにちではインターネットなどで就職・採用活動の実態もどんどん広く伝えられてしまう時代ですから、それほど悪いこともできないでしょう。「春休みに企業研究し、夏休みに就活する」というのがひとつの望ましいパターンとすると、倫理憲章も「2月に就職サイト解禁、9月に活動解禁、10月に内定解禁」くらいにすればそれに近くなるような気がするのですが、そうでもないでしょうか。