後藤田正純氏の「正しい知識と認識」

同じネタをひっぱりますが、20日、21日のエントリで取り上げた「東洋経済」の特集の中に、政治家の後藤田正純氏のインタビュー記事もありました。

 日本政府が取り組むべき課題は、成長戦略、財政再建、そして労働者、消費者の健全化だ。小泉、安倍の両政権では政策の柱として規制改革を掲げてきたが、規制緩和によって潤ったのは消費者、労働者ではなく企業だった。それが真の改革といえるだろうか。
 経済成長には内需拡大が必要だが、そのためには家計が豊かにならなければならない。今求められているのは、富の再配分だ。経済財政諮問会議や規制改革会議にいる学者には、「改革」の名の下に、本当に現実がわかっているのかと言いたい。間違った知識と認識を持って発言する人間があまりにも多すぎる。
週刊東洋経済第6127号から)

まあインタビュー記事のゆえに意が尽くされていないのでしょうが「規制緩和によって潤ったのは消費者、労働者ではなく企業だった」というのはいかがなものなのでしょうか。規制緩和なくして通信料金の劇的な低下、携帯通信端末の爆発的な普及はなかったであろうことは自明ではないかと思いますし、フリーターでも年中インターネット接続が可能な社会になったのも規制緩和のおかげでしょう。規制緩和は、規制によるレントを享受していたもの(企業であれ消費者であれ労働者であれ)に不利益に働き、そうでないものの利益となったというのが常識的な考え方ではないかと思うのですが…。
それから「今求められているのは、富の再配分だ」と大上段に構えていますが、それに続く具体論が(引用していませんが)パート法や派遣法の改正というのもちょっと…。もちろんこれらに再分配効果がないとは申しませんが、やはりその効果は限られたものであるわけで、本気で「今求められているのは、富の再配分だ」というのであれば、税制とか社会保障とか再分配効果の大きい分野でもっと根本的な議論をすべきではないかと思います。それは雇用や労働にも結びついてくる話です。まあ、もちろんそれはそれでやる、ということかもしれませんが…。
「間違った知識と認識を持って発言する人間があまりにも多すぎる」というのは、ご自身は「正しい知識と認識を持って発言する」希少な人間の一人だ、ということでしょうが、まあそれはそのとおりなのでしょう。それは「政治的に」正しい知識と認識ということでしょうから、後藤田氏がご自身の知識や認識が正しいと信じておられればそれが正しいということなのだろうと思います。