キャリア辞典「テレワーク」(2)

「キャリアデザインマガジン」第66号に掲載したエッセイです。

 国土交通省の「2005年時点のテレワーク人口推計(実態調査)」では、テレワークをする人=テレワーカーを「「情報通信手段(IT)を活用して、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方をする人」をさします。例えば、自宅、サテライトオフィス、テレワークセンターなどで、又はモバイルワークにより、通常勤務する場所以外の場所でITを活用して1週間あたり8時間以上働く人のことをいいます。」と定義している。そして、テレワークを「雇用型」「自営型」に区分し、それぞれ506万人、168万人と推計している。
 これに対し、古くからわが国では在宅での仕事として「内職」が行われてきた。これは家内労働の一形態で、厚生労働省の「家内労働概況調査」や「家内労働実態調査」では、「内職的家内労働」を「主婦や高齢者等世帯主以外の家族であって、世帯の本業とは別に家計の補助等のため家内労働に従事する者をいう」と定義している。いささかジェンダー的に問題のある定義ではあるが、実態をふまえればこうなるのだろうか。そして、家内労働法では家内労働の定義として「製造加工業者などから委託を受ける」「物品の提供を受け、それを部品・附属品又は原材料とする物品の製造加工等に従事する」「常態として他人を使用しない」などの要件があげられている。
 つまり、テレワークと内職の相違点は2つあり、ひとつはテレワークが雇用関係を多く含むのに対し、内職は請負契約に限られる点だ。そのため、雇用型テレワークでは雇用主から賃金を受けとるのに対し、内職は委託者から出来高払いで工賃を受け取ることが多い。もうひとつは、内職がもっぱら「物品の製造加工等」を行うのに対し、テレワークは「情報通信手段(IT)を活用」する点だろう。
 「在宅ワーク」という用語もあり、これは厚生労働省が使っているようだ。同省(当時は労働省)が平成12年に策定した「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」では、在宅ワークは「情報通信機器を活用して請負契約に基づきサービスの提供等を行う在宅形態での就労のうち、主として他の者が代わって行うことが容易なものをいい、例えば文章入力、テープ起こし、データ入力、ホームページ作成などの作業を行うものがこれに該当する場合が多い。ただし、法人形態により行っている場合や他人を使用している場合などを除く」と定義されている。これは国土交通省のいうところの自営型のテレワークに近いといえそうだ。
 厚生労働省の調査によれば、家内労働者は昭和40年代後半には180万人を超えていたが、平成18年には20万人を下回るまでに減少している。いっぽう、自営型のテレワーカーは2002年に97万人、2005人には前述のとおり168万人にまで増加している。これもまた、産業構造の変化や技術革新のひとつのあらわれなのだろうか。