進展するパートの正社員化

きのうの日経新聞に、パートタイマーの正社員化の事例が紹介されていました。中でも、雑貨小売大手のロフトの事例は先進的です。

 ロフトはセブン&アイ・ホールディングスの子会社で、首都圏や近畿を中心に国内に三十八店舗を持ち従業員は約三千人。このうち約二千二百人いるパートの雇用契約は半年単位で期限ごとに更新していた。これを来年三月をメドに期間を撤廃して原則「無期契約」に変更する。
 賃金面では正社員、パートとも職務内容と勤務時間で決まる新制度に原則一本化。店長からレジ担当まで十七段階ある職務ごとに時間給を設定し、正社員とパートの両方に適用する。
 労働時間は正社員で週四十時間、パートは週二十時間程度が一般的だが制度変更後は同じ職務なら賃金の差は勤務時間の違いだけとなる。現在のパート社員から店長などに昇進する道も開くほか、賞与も支給する。
 賞与支給の仕組みは今後決めるが、人件費は年金などを除いても年数億円は増える見通し。賃金と契約期間の両面でパートと正社員の待遇を同等にするケースは珍しい。
(平成19年7月4日付日本経済新聞朝刊から、以下同じ)

これはたしかに珍しいかもしれません。
なにが珍しいかといって、パートもさることながら、正社員を時間給にするというのが珍しい。これだと、正社員でも勤務日の多い月は賃金が多く、少ない日は賃金が少なくなることになります。仮に時給2,000円とすると、2月は週休+建国記念日で休日が9日あるので出勤日は19日、一日8時間勤務とすると月給は2,000×8×19=304,000円となります。8月に週休が8日しかないと、勤務日は23日となり、月給は同様に368,000となり、かなりの違いになります。正社員は月給で勤務日の多少にかかわらず月例賃金は変動しないのが一般的なわが国では、これはかなり珍しいことなのではないかと思います。勤続が短い有期雇用は時給にならざるを得ないでしょうが、長期勤続を前提とする正社員については、月々の賃金の変動を避けるために月給制にすることが一般的なわけで、パートも期間の定めのない雇用に変更するということは、パートにも長期勤続を期待しているわけでしょうから、だったら賃金も月給制にしたほうが自然だと思うのですが…。そうなれば、長らく提唱はされているもののなかなか拡大しない「短時間正社員」の事例のひとつになりうるのではないかと思います。
時給をそろえるのは、正社員もパートも長期勤続で長期育成をめざすのであれば当然といえるでしょう。もちろん、一定以上の職務になると、フルタイム働ける人と短時間しか働けない人とでは経営上の価値が異なってくるわけですが、これについては一定以上の職務・地位につくにはフルタイムへの転換を要するという運用で対応できるということだと思われます。
記事では他にも事例が紹介されていますので、備忘的に転記しておきます。

 シダックスは二〇〇八年三月末までに、パートとアルバイトの約二%に当たる五百人を正社員にする。食の安全志向が強まるなかで、栄養士や管理栄養士の資格を持つ非正社員が管理職に進む道を開く。
 四月時点では正社員約二千二百人に対し、単年度の契約社員が約二千五百二十人、パート・アルバイトが約二万五千人。正社員でなくても職場のリーダー的存在になる人材が増えているが、賃金など待遇では格差が生じてしまうことから正社員への登用を進め人材流出を防ぐ。勤務地限定の正社員とするほか、将来は管理職や役員など幹部に登用することも目指す。
 先行してパートの待遇改善に手を打った企業も取り組みを強めている。〇四年にパートに正社員と同じ職能資格制度を導入した大手スーパーのイオンでは同制度に沿い約百人の売り場のマネジャー(責任者)が誕生、さらに一人がパートから店長になった。
 ファミリーレストラン最大手のすかいらーくは、ほぼ毎月、パートの正社員登用試験を実施。〇六年は五十七人を正社員にした。今年は約八十人の採用を決めており、中途採用者に占めるパートを〇六年の二割から四割程度まで増やす考えだ。
 NTT西日本はコールセンター子会社のパート・契約社員約三千六百人を対象に今年四月までにまず千人を時給制から月給制に移行。販売実績や対応件数が多い約六十人を正社員にした。「相談窓口の従業員の士気を上げてサービスの質を高める」(森下俊三社長)狙いで、業務成績が優秀な契約社員を中心に正社員への採用を増やす。

好景気や事業拡大などで人手不足となれば、パートにもなるべく長期間働いてほしいことは間違いないわけで、それが高じれば正社員化という流れになることは自然といえましょう。数年前まで長きにわたった経済低迷、業績不振のなかで、適切な割合を超えて非正社員比率が高まってしまったと感じている企業も多いはずで、まだしばらくはこうした動きが拡大するのではないでしょうか。