八つ当たり

昨日の日経新聞1面のコラム「春秋」で面白い話題が取り上げられていました。

 ここでクイズを一つ。以下に挙げる職業の共通項は何でしょう。美容師、ピアニスト、自転車によるお届け屋、新米コック、建築家、照明デザイナー、広告代理店社員、パイロット、検事。即答できる人はかなりの芸能通かもしれない。
(平成19年3月5日付日本経済新聞朝刊から、以下同じ)

▼キムタクこと木村拓哉さんが連続ドラマで演じた役柄だ。普通の若者のあこがれを体現し、検事役すらジーンズ姿で通したキムタクが今、「華麗なる一族」で鉄鋼会社役員として、仕立てのいい背広にネクタイという新鮮な姿を披露している。

バブル期に、テレビドラマの主人公がいわゆる「横文字職業」ばかりで、住んでいる部屋なども現実離れしたおしゃれなもので描かれていることが「若者が地道な仕事や生活を『カッコ悪い』として避けることの原因となっている」と批判されたことがあったように思います。たしかに、人気タレントの演じる職業が「普通の若者のあこがれを体現」というところはあるのでしょう。ここに出てくる職業をみても、「自転車によるお届け屋」以外はそれなりに若い人の受けのよさそうな職業ばかりです。まあ、私はドラマをさっぱり見ないのでイメージがぜんぜんわかないのですが…。
そういえば、以前も書いたかもしれませんが、わが国で大人気を博した韓国ドラマ「冬のソナタ」でも、主要登場人物の職業はこんなでした(http://www.huyunosonata.com/archives/2005/08/post_4.htmlによる)。

  • イ・ミンヒョン(ぺ・ヨンジュン):「ホワイト」スキー場の責任者。建設会社マルシェの代表。
  • チョン・ユジン(チェ・ジウ):「ポラリス」というインテリア会社を同僚と一緒に運営。
  • キム・サンヒョク(パク・ヨンハ):放送局のラジオプロデューサー。
  • オ・チェリン(パク・ソルミ):ファッションデザイナーで、オ・チェリンブティックを経営。
  • カン・ミヒ(ソン・オクスク):国際的なピアニスト。

こういう傾向は万国共通、とはいえませんが、日韓共通ではあるようです。まあ、プロジェクトXがいかに好評を博したとは言っても、トンネル技術者や辺地の医師を目指す若者が目立って増えるということはない(少数であっても増えていると信じたい)でしょうから、キムタクが過酷な建設現場で働くトレンディドラマを作ったところで3K職場の人気が高まることもないのでしょうから、いささか八つ当たり気味ではありますが、それにしてもな…という感は禁じ得ません。まあ、テレビドラマというものはそういうものだし、そうならざるを得ないと言うのもわかるのですが…。