曙ブレーキの育児支援

曙ブレーキは自動車ブレーキ最大手で、主力事業所は埼玉県羽生市にあります。筆頭株主トヨタ自動車(15,495千株)ですが二番手はロバート・ボッシュ・コーポレーション(12,597千株)で、販売依存率は日産自動車が最大で12%という面白い会社です。1929年創業、1936年設立といいますから、この業界ではかなりの歴史と伝統があるといえるでしょう。従業員数は連結で6,736名(2006年3月末)、平成18年3月期の連結売上高が142,260千円、連結経常利益は11,025千円となっています。

 自動車部品大手、曙ブレーキ工業は四月から育児支援制度を拡充する。従来一年間だった育児休業期間を延長するほか、勤務時間の短縮や看護休暇の取得対象になる子どもの年齢も引き上げる。出産や育児でやむなく退社した従業員を再び雇用する制度も導入し、子育てをしながらでも働きやすい環境を整える。
 育児休業は子どもが三歳になった年の年度末まで期間を延長する。期間内であれば分割して休暇を取ることも可能で、家庭の事情に応じて休業期間を設定できるようになる。休業中でも休職前の職場の上司、人事担当者、本人が三カ月に一度程度、定期的に面談することで、職場への復帰を支援する。
 休業期間中にはこれまで共済会から月一万円の支援金を支給していたが、四月以降は三万円に増やし、金銭面でも手厚く支える。
 子どもの面倒を見るための短時間勤務ができる期間も延ばす。勤務時間を通常の八時間から六時間に短縮できる制度は子どもが小学三年生を終えるまでが対象だったが、小学六年生を終えるまでに延ばす。子どもの病気を看護するために年五日認められる看護休暇も子どもが小学六年生を終えるまで取得できるようになる。
 出産・育児などで退職した元従業員を対象にした再雇用は退職前の処遇にこだわらず、中途採用として扱う。親の介護やパートナーの海外転勤などで退職した従業員も対象にしており、個別の事情に応じた働き方が可能になる。
 曙ブレーキは一月一日付で多様な人材を活用することを狙った「ダイバーシティ推進室」を立ち上げた。育児支援制度の拡充も多様な人材を活用するための一環。
(平成19年3月7日付日本経済新聞朝刊から)

驚くような目新しい内容はありませんが、なかなか充実したパッケージといえるのではないでしょうか。長い歴史と優れた技術力を持つ自動車部品メーカーですから、機械工学の技術者と生産技能工が中心で、おそらくはわが国の伝統的な「男社会」企業の体質を残した企業の典型ではないかということは容易に想像がつきます(失礼)。そうした企業でも、これからの時代は女性や高齢者などの多様な人材を活用していかなければならないということで、専門の組織を設けて、さまざまな施策に取り組んでいるのでしょう。現実にはそれほど女性の活用が進んでいるとも思えません(失礼)ので、まずはこうした制度を導入することで、社内の意識や風土に一石を投じるというねらいでしょうか。
1月に組織を立ち上げて4月に制度導入ということですが、これだけの規模の企業になるといかに経営トップがその気でも(トップにその気がなければ絶対に進まないでしょうが)それほど簡単に話が進むとも思えません。おそらくは、組織立ち上げまでにも相当の労力が費やされているに違いなく、担当者の尽力には頭が下がる思いです。