労使の意見に異論あり

 先週金曜日、労働政策審議会で労働契約法案要綱と労働基準法改正法律案要綱について答申が行われました。契約法のほうは単純に妥当との答申ですが、基準法のほうは労使双方の意見つきです。
 で、労働者代表委員の意見は、まずは自己管理型労働時間制は認められないというもので、これはとりあえずおいておきましょう(笑)。もうひとつ、労働者代表委員は企画型裁量労働制についても意見を述べていますが、これまたちょっと妙な意見です。
 いわく、「二重の規制を設けることは問題」だということで、これはたしかにルールは簡潔にわかりやすく、ダブルスタンダードはよくない、という意味ではもっともなことといえましょう(私などは大企業も中小企業の規制に揃えればいいのではないかと思うのですが、それはそれとして)。驚いたのは、さらに続けて「対象者の範囲を拡大することになるので、見直しを行うことは認められない」となっていることで、これはいったいどういう意味なのでしょうか。対象者の範囲を拡大するから認められない、というのはぜんぜん理由になっていないように思うのですが。今現在の範囲が最大限だということなのかもしれませんが、これが最大限だという根拠はなにかあるのでしょうか?それとも、本来一切認められないものであるから、範囲の拡大も当然に認められない、ということなのでしょうか?それもいかにも硬直的ですし、企画型裁量労働制を望む組合員も現実には相当数いるのではないかと思うのですが…。
 続いて使用者代表委員の意見も記されていますが、こちらも首をひねらざるを得ません。割増賃金について「引上げは長時間労働を抑制する効果が期待できない」、これは非常によくわかるのですが、続けて「企業規模や業種によっては企業経営に甚大な影響を及ぼす」というのはいったい何事なのでしょうか。まあ、たしかに法律案要綱には具体的な数字が書いてありませんから、数字次第では影響が甚大になる可能性はあるかもしれませんが、だったらそういう意見を述べるべきでは。実際には、これは月間80時間以上で50%という数字が想定されているわけですから、それで「甚大な影響」が出るというのは普通の企業ではちょっと考えにくいものがあります。「規模や業種によって」といいますが、80時間を超えた分についてだけ25%が50%になる、これが「甚大な影響」になる企業というのは、つまり従業員の大半が月間80時間を相当時間超えて時間外労働している企業ということでしょう。こんな非常識な長時間労働の企業が本当にあるのなら、それは「甚大な影響」があってもなんらかの方法で(割増率を上げても効かないと思いますが)労働時間を抑制すべきであり、それまで「甚大な影響があるから認められない」というのはさすがに無茶な意見ではないでしょうか。