お互いさま

昨晩の日経新聞夕刊から。

 仕事と生活の調和を意味する「ワーク・ライフ・バランス」。企業が進めるこの両立支援は子どもを持つ女性に限定されがちだ。しかし、既婚や性別にとらわれず全従業員を対象にする企業が登場し始めた。育児中の社員の仕事の代替で負担が増え、不公平感を持っていたシングルの社員も恩恵を受けられる仕組みだ。
 「休暇を機に、仕事と私生活にメリハリがついた」。東京スター銀行コーポレートファイナンスグループで法人向けに貸付業務を行う中城裕子さんは昨年、休職制度を利用して二カ月間、海外で裁縫指導のボランティアに参加した。
 同行は二〇〇六年四月から「ファミリーバランス」プロジェクトを開始。育児など事情のある社員だけでなく、全従業員が仕事と私生活のバランスをとりながら働けるように推進策を整備している。休職制度はその一つ。所属長の承認を得られれば最長二十六カ月まで休むことができる。
 これまで最長でも十日程度しか休んだことがなかったという中城さん。育児と仕事の両立支援は充実しているが、独身の中城さんには恩恵がなく「理不尽さを感じることもあった」。だが新たな休暇制度を契機に「個人の事情で休んだしわ寄せが誰かにいくのはお互いさま」と考えられるようになったそうだ。
(平成19年2月5日付日本経済新聞夕刊から)

なるほど、なるほど。これは大切なポイントかもしれません。育児休業、介護休業だけだと、対象者は限定されていますので、「なぜあの人が休んで、私がその分苦労しなければならないのか」という不満は出やすいでしょう。そこで、それへの対応としては、賞与や人事考課などで、休んだ人は高く、休まなかった人を低くするというのが現実的でしょうが、それをやると今度は「評価が下がるのがイヤだから休めない」という議論が出てきます。
だったら、休める理由を拡大して、あるいは理由は不問にして、大多数の人が長期休暇を取るようにすれば、まさに「お互いさま」ということになって、休みにくい雰囲気がなくなるのではないか、というのは、たしかに有望な考え方のように思います。
もっとも、休めるようにしたらしたで、休みを能力向上に使った人や、仕事を優先して休まなかった人などは高い評価を求めるという事態が発生しそうで、なかなか一筋縄ではいかない問題かもしれませんが。