連合

せっかくなので(何が?)昨日の続きで、奥谷さんに続いて労働者代表委員の長谷川裕子連合総合労働局長の記事も見てみましょう。まあ、お立場もあるでしょうし、こういう言い方をせざるを得ないということはわからないではないですが、方向こそ逆ですがおかしいという点では十分奥谷さんとタメ張ってます(笑)。

 今でさえ青天井のような労働時間がさらに長時間化して、その結果、過労死やメンタルヘルス問題が増大するのではと懸念している。
週刊東洋経済2007年1月13日号から、以下同じ)

おお、いきなり青天井ですか。ま、これはレトリックですから別にいいんですが、週休一日で頑張っていた昭和60年代のお父さんたち(ジェンダー的に問題ありの表現ですが、実情を反映した表現ということで)の労働時間は月まで届きますね。それにしても、労働安全衛生法には100時間で医師の面接指導というキャップがありますし、WEのほうはそれを80時間に必ずするということになっていますが、それでも「青天井」がさらに長時間化しますかそうですか。「増大」を懸念するのは労組の立場としてはそういうものかもしれませんが、できれば、だからWEが絶対ダメということではなく、増大の可能性が十分低くなるような制度づくりに知恵を出すという建設的な対応を期待したいものです。

有給休暇だって消化できないのに本当に年104日休めるのか。

えーと、私の周囲をみる限り、「有給休暇は残っているけど週休2日の休日(プラス祝日や年末年始などの三大連休)は休んでます」という人がほとんどです。日本全体でも大方はそういう実態だと思うんですけどどんなものなんでしょうか。

上司と部下が休日出勤してるのに、自分だけ休みます、なんて本当に可能か。

休日出勤すればいいじゃないですか。他の日に休んで、年間しめて104日休めばいいわけですから。どうしても104日休めなければ、そういう人はWEの対象外になる(そうしないと使用者に刑事罰が課される)というだけのことで、そういう人が一人いるからWEが全部ダメってことにはならないと思うのですが。

まして、今回の対象者は管理職一歩手前の人たち。来年は課長昇進、と目の前に人参ぶら下げられている人なら、むしろ遅くまで働いてでも成果を出そうとするのではないか。

逆にいえば人参を食べなければ早く帰れる制度でもあるわけですよ。もちろん、実際には早く帰っても人参を食べられる人もいれば、遅くまで頑張ったけど人参は食べられなかった、という人もいるでしょうが。

 使用者側は「1日8時間、週40時間」は、ホワイトカラーの多様な働き方に合わないと言うけれど、多くの職場は今もグループで仕事をしている。あなたは自由だから、期日までに仕上げさえすれば、出社も保育園へ子供を迎えにいくのも何でも自由、なんて絶対できないですよ。

使用者側は、「あなたは自由だから、期日までに仕上げさえすれば、出社も保育園へ子供を迎えにいくのも何でも自由」というのが「多様な働き方」だと言っているのでしょうか?ああ、言ったのかも知れないなぁ、奥谷さんあたりが(笑)。もちろん、WEは「何でも自由」になるというものではないわけで、何でも自由が絶対にできないから働き方は多様ではない、っていう理屈もヘンなもんだと思いますが。

 むしろ重要なのは、たとえば朝9時から夕6時までの間で成果を出す、ということのはず。

これはごもっとも。だから、働けば働くほど賃金が増える現行制度はやめて、より賃金が出た成果に連動しやすいWEにしましょう、という考え方もあるわけで。いっぽうで、朝9時から夕6時までテキパキ働くよりは、朝9時から夕7時まで多少ゆったり働きたい、という程度は自由にしたい、という考え方もあるでしょうし。

すでに日本では勤務時間の多様化が進んでいて、裁量労働制、みなし労働時間制など今の制度の生かしようがまだまだある。そのうえでさらに新制度が必要というのは、経営者の人事管理能力が落ちている証拠ではないか。

あれ、連合さんは裁量労働制を導入、拡大するときには大反対なさったように記憶していますが、実は裁量労働制やみなし労働時間制が拡大するのは歓迎ですかそうですか。経営者の人事管理能力が落ちているなら、ぜひとも連合さんにご指導をいただいて、裁量労働制やみなし労働時間制を大幅に拡大させていきたいものです。ただし、人事管理を連合のご指導のとおりにしたら企業経営が成り立たなかった、というのでは困りますが、確実にそうなりそうですが…。
それはそれとして、裁量労働制とWEとはまったく別のもので、裁量労働制の欠点を克服するためにWEが必要なのですから、裁量労働があるから十分でしょとは言えないのではないかと思います。

 労働者派遣法の例にあるように、いったん新しい皿さえ作れば、あとは改正改正でなし崩し。結果、すべてのツケは派遣労働者に回された。だから今回も慎重さを求めている。

うーむ、労働者派遣法に関しては、労働サイドも参加してその実態をフォローして、それをふまえて公労使で議論して法改正しているはずなのですが、「なし崩し」ですかそうですか。「すべてのツケは派遣労働者に回された」とおっしゃられますが、4年、5年と続けて働きたいのに働けない派遣労働者が多数存在するのは、連合の正社員至上主義のツケ回しではないんですかそうですか。正社員の雇用安定のツケを派遣労働者に回さないために、正社員の解雇規制を緩和するんですかそうですか。
まあ、労組幹部というのは組織の意思決定にしたがって発言しなければならないので、奥谷さんのように言いたいことを言うわけにもいかず、往々にして思ってもいないことを言わざるを得ないこともあるのでしょう。裁量労働拡大の旗を振っていた電機連合の古賀氏が、連合の事務局長になったらWE絶対反対の談話を出しているくらいですから。経団連だって年収400万円でWEとかいう(たぶん)心にもない極論を言っているわけですし、これはお互い様ということでしょう。