今年の10冊

今年は、このブログで取り上げてこなかった、いわば「隠し球」だけで「今年の10冊」を構成しようという趣向です。ネタがないときに、この企画のために面白い本を温存するのはけっこうツラいものがありました(笑)。もちろん、耐え切れず?(笑)すでに取り上げてしまった本にも、この10冊と同様によかった本も多々ありますので念のため。
ちなみに著者名50音順です。

飯田泰之『ダメな議論』

ダメな議論―論理思考で見抜く (ちくま新書)

ダメな議論―論理思考で見抜く (ちくま新書)

あるある、こういう「ダメな議論」。愉快痛快に読みました。唯一残念なのが、最初の若者論のところで玄田有史希望学』を材料にしているのですが、これがわかりにくい。その次からはたいへんわかりやすかったのですが。若者論なら、もっと「明らかにダメな議論」がいくらでもあるのに、『希望学』を「改悪」してまで使ったのは、玄田叩きをやりたかったのでしょうか。ちょっとしたファッションになってるみたいですし。

稲葉振一郎立岩真也『所有と国家のゆくえ』

所有と国家のゆくえ (NHKブックス)

所有と国家のゆくえ (NHKブックス)

人文系ヘタレインテリの端くれとしては、人文系ヘタレインテリ本(と言っても両著者にはそれほどひどくは怒られないと思いますが。いや怒られるか。)からも一冊は入れようということで。対談スタイルということもあり楽しく読みましたが、当然ながら論評は私の力量の到底およぶところではありません。ただ、感想としては、両者の意見の違いというのは、考え方やら理念やら思想やら(なにが違うんだ?)なにやらの違いというよりは、性格の違いによるところが大きいのではないかという印象を受けました。いやほんと印象ですが。

大竹文雄編『応用経済学への誘い』

応用経済学への誘い

応用経済学への誘い

このところ、同じ著者による昨年末の『経済学的思考のセンス』をはじめ、経済学の考え方や分析手法のさまざまな分野への応用(と興味深い結論)を紹介する本がいくつも出されています。同書のほか、「ヤバい経済学」や「まっとうな経済学」など、世評の高い本もあり、どれもいい本だと思いますが、せっかくですので(何が?)ここでは純和製ということでこの本を上げたいと思います。論文集ですので他の類書と較べて読みにくいのではありますが、いずれも興味深い分析を提示しています。

川喜多喬『仕事と組織の寓話集・・ふくろうの智恵』

かつて「労政時報」誌に「こだわり人事のススメ」が連載されていた当時、職場で回覧される同誌のそのページだけは、各メンバーが思い思いに下線を引いたり、コメントを書き込んだりしていたことが思い出されます。博覧強記と洒脱な文章で人事の核心に切り込んだ数々のエッセイは人事担当者の深い共感を呼び起こすものだと思います。「今年の一冊」を選ぶとしたら、有力候補の二冊のうちの一冊です。書店では流通していないらしく「はまぞう」でリンクを入れられないのですが、ぜひとも入手して一読してほしい本です。問い合わせは下記からどうぞ。買って読んで絶対に損はありません。みんなで読んで宣伝して商業出版に持ち込みましょう。
http://kawakita.blog32.fc2.com/blog-entry-1061.html?open_block=1

E.クイーン『間違いの悲劇』

間違いの悲劇 (創元推理文庫)

間違いの悲劇 (創元推理文庫)

ミステリからも一冊。今年も、不朽の名作「人形はなぜ殺される」をはじめとする高木彬光氏の名作群の新装版が刊行されたり、フィリップ・マクドナルドの名作「鑢」が復刊されたりなど、ミステリ界では他にもいろいろと収穫がありました。どれをとるか迷うところですが、やはりこれを。梗概ですし、作品の出来はどうかという問題もあるにしても、やはりクイーンの新しいものが読めるというのは大変な喜びなわけで。



というわけで続きは明日のエントリで(笑)