キャリア辞典「ワーク・ライフ・バランス」(2)

「キャリアデザインマガジン」の記事、「キャリア辞典」の「ワーク・ライフ・バランス」の第2回です。先日発表された経団連の「2007年版経営労働政策委員会報告」でもワーク・ライフ・バランスが大々的に取り上げられており、今後さらに流行するかもしれません?

 ワーク・ライフ・バランスと似た概念に「ファミリー・フレンドリー」がある。例によって「日経テレコン」で日本経済新聞の初出を調べてみると、こちらは1995年にさかのぼる。ただ、欧米で「ファミリー・フレンドリー」が言われはじめたのはさらに早く、米国では1980年代にはすでに人材確保のための待遇改善のひとつとして普及しはじめていたらしい。いっぽう、欧州では人材確保より企業の社会的責任の一環として政策的に進められたという。
 わが国では、1998年に労働省(当時)が「「家庭にやさしい企業」(仮称)研究会」を設置し、1999年には「ファミリー・フレンドリー企業表彰」などをはじめとする「ファミリー・フレンドリー」企業普及促進事業を開始した。それによると、ファミリー・フレンドリー企業とは「仕事と育児・介護とが両立できるような様々な制度を持ち、多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるような取り組みを行う企業のこと」であるという。具体的には「法を上回る育児・介護休業制度を規定しており、かつ、実際に利用されていること」「仕事と家庭のバランスに配慮した柔軟な働き方ができる制度をもっており、かつ、実際に利用されていること」「仕事と家庭の両立を可能にするその他の制度を規定しており、かつ、実際に利用されていること」「仕事と家庭との両立がしやすい企業文化をもっていること」が要件としてあげられている。「その他の制度」というのは、企業内託児所や託児施設利用補助手当の支給などを指しているらしい。
 こうしてみると、「仕事と家庭の両立」がポイントとなるファミリー・フレンドリーに較べて、「仕事と生活の調和」をめざすワーク・ライフ・バランスのほうが、さらに幅広い概念であるようだ。米国の「家族と仕事の研究所」によれば、ファミリー・フレンドリーにも発展段階があり、まずは子どもを持つ女性を対象とした育児支援にはじまるが、段階を追って男性も対象とされたり、共働き家庭に限らずひとり親家庭や単身世帯などに対象者が拡大され、支援の内容も介護をはじめとする生活上の様々な課題が含まれるようになるという。これにあわせて、用語のほうも「ファミリー・フレンドリー」から「ワーク・ライフ・バランス」が使われるようになるのだそうだ。
 ちなみに、三菱UFJ信託銀行はファミリー・フレンドリーな企業の株式に投資するファンドを販売しており、2006年12月18日現在で純資産4,603百万円とけっこうな売れ行きを示している。運用成績も2006年11月のデータで1年で9.62%と、まずは上出来の部類だろうか?ポートフォリオの上位をみるとトヨタ自動車松下電器産業キヤノンといった優良企業と並んで、「三菱UFJフィナンシャル・グループ」も加えられており、なかなかの自信のようだ。