ホワイトカラー・エグゼンプションは何のため?

一昨日来取り上げている笹島芳雄明治学院大教授の「経済教室」に関連して、もうひとつ大きな疑問があります。
きのうも紹介したとおり、笹島氏は最初の4分の1くらいの分量をさいてWLBの重要性を説き、最後にも「自律的労働条件制度導入の条件としては、自律的な働き方が真に可能であるホワイトカラーに限定することが大切であり、適切に機能するならばワーク・ライフ・バランスに資するだけでなく業務効率も大幅に向上する。…今回の労働時間法制の見直しを通じて、働きやすい企業社会が実現することを切に望みたい」と締めくくっています。
私が疑問に思うのは、WEは単にWLBのためのものなのだと言ってしまっていいのか?ということです。笹島氏はWLBについて高齢者や女性の就労、少子化対策などから論じており、もっぱら労働時間を短縮するものと考えているようです。もっとも、労働条件分科会の報告書の案においても「仕事と生活のバランスを実現するため」「長時間労働を抑制しながら」などと書かれていますので、これは笹島氏独自の見解というよりは、役所の公的見解の敷衍なのかもしれません。
しかし、基本的な考え方として、WEの目的を「労働時間を短くしてそれ以外の生活の時間を増やすこと」におくのは適当ではないのではないかと思います。もちろん、のべつまくなしに長時間労働して健康被害を起こすようなことはあってはならないわけですが、いっぽうで「必要なとき、働きたいときには集中・没頭して働き、休むときはまとめて休む」という働き方をしたいと考えている人も多いのではないでしょうか。大きいプロジェクトの完成間近には連日泊り込みくらいで集中的に働き、終わったら2週間とか1か月とかの休暇を取るとか、実験や調査などに夢中になって没頭しているときには時間を忘れて働き、翌日はまるまる一日休養にあててしまうとか、いろいろな働き方を求めている人がいるのではないかと思います。WLBもこうしたニーズを取り込めるような、懐の深い概念として考える必要があるのではないでしょうか。