なんとなく、そんな気はするけれど

昨日の続きです。
昨日の日経「経済教室」、笹島氏は論考の後半で日米の条件の違いを説き、日本のWEに十分慎重な設計を求めています。

  1. 米国では個人の担当業務が職務記述書で明確に規定されており、自己責任で自分のペースで働くことができ、在宅労働も可能である。
  2. 米国ではポスティングシステム等により担当職務の選択権をホワイトカラーが保持している。
  3. 米国のホワイトカラーは転職しやすい。

もちろん労働条件分科会ではこうした違いをしっかり踏まえて議論されているわけで、だから高額の年収要件とか、本人同意や集団的手続など米国のWEにはないしくみを導入しようとしているわけです。笹島氏は後段でも「チームワークでの業務が多く、自律的な働き方が困難で、恒常的残業や年休の取得できない働き方になっている」と主張して(この主張がどこまで文字どおりに正しいかには大いに異論がありますが)、こうした人にWEを適用すべきでないと述べていますが、米国のWEか労働時間規制かという二分法で思考停止するのではなく、日本の現状に合ったWE的な制度のあり方をこそ考えるべきではないでしょうか。
それはそれとして、笹島氏は続けて「わが国の多くの企業には職務記述書はなく、個々のホワイトカラーの職務内容は明確に規定されていない。権限や職務内容のあいまいさは弾力的な業務運営を可能とするから時には効率的になる側面もあるが、ホワイトカラー全体としては非効率であり長時間労働の温床となっている。」と断罪していますが、本当にそうなのでしょうか。証拠を見せていただきたい、証拠を。「権限や職務内容のあいまいさは弾力的な業務運営を可能とするから時には効率的になる側面もある」ことについては、私もたくさんの実例を知っていますし、おそらくは「時には」ではなく「多くの場合は」であろうというくらいの異論しかありません。しかし、「ホワイトカラー全体としては非効率であり」ということについて納得のいく説明を聞いたことはありません。長時間労働が多いから非効率だろうとか、過労死が発生しているから非効率だろうとかいうのは単なる印象論であって、「権限や職務内容があいまいだから全体として非効率になっている」ことの説明にはなっていないのではないかと思うのですがどんなものなのでしょうか。

  • 私は「納得のいく説明を聞いたことがないから、本当にそうかどうかはわからない」と申し上げているのであって、「本当はそうではない」と申し上げているわけではありませんので念のため。
  • 同様に、「権限や職務内容のあいまいさが長時間労働の温床になる」というのも疑わしい部分があるように思います。まあ、あいまいだからあれもやれこれもやれ、と仕事が増えがちだ、というのは感覚的にはわかりますが、その一方で、パートタイマーであっても権限や職務内容があいまいなことは日本では普通に見られるように思います。

ブログがたまっているので、もう一日引っ張ります(笑)