キャリアデザインマガジン第52号の「キャリア辞典」で「ワーク・ライフ・バランス」を取り上げます。「ファミフレ」なんかも絡めて、長めの連載になりそうな予感がします。日経テレコンを使うのはとても便利な私の得意技です(笑)。
「ワーク・ライフ・バランス」(1)
日本経済新聞の記事検索サービス「日経テレコン21」を使って、「ワーク・ライフ・バランス」が日経新聞に何回登場したかを調べてみよう。初出は2002年10月8日で、同年に発表された「少子化対策プラスワン」に関する記事だ。「プラスワン」が「男性の育休取得率10%」や「男の出産休暇5日間」など男性を含めた働き方、意識の見直しを求めたことを受けて、『少子化対策といえば従来は、共働き女性の仕事と家庭の両立に力点を置いた「ワーク・ファミリー・バランス」型が中心。今後は男性も巻き込んだ「ワーク・ライフ・バランス」型への転換が図られることになりそうだ』という書き方になっている。
さて、「ワーク・ライフ・バランス」の登場は、2002年はこの1件だけにとどまる。翌2003年も1件だけで、企業の育児支援に関する記事の中で、代表的な先進事例である資生堂について『9月に東京本社に保育所を開いた資生堂も、単に制度をそろえるだけでなく、生活と家庭の両立を重視する概念「ワーク・ライフ・バランス」を大切にする企業文化を構築しようとしている』と書いている。2004年には8回とかなり増えたが、登場はまだ夕刊の生活欄に限られている。一気に増えたのが2005年で、登場は22回にのぼり、社説でも取り上げられている。使われ方としては、その社説が「出生率改善に企業も努力を」であるように、少子化対策との関連が多いのではあるが、2005年なかば以降になると、個人の生活全般の改善、充実といった観点からの使われ方も増えているようだ。そして今年(2006年)は11月末までに29回登場し、まあ月に2回は日経で「ワーク・ライフ・バランス」の語をみる、という状況になっている。労働契約法の議論が進められていることもあり、朝刊での登場も増えている。
訳語はどうだろうか。直訳すれば「仕事と生活の均衡」とでもなるのだろうが、いささかニュアンスが違いそうだ。そこでまたしても日経新聞への登場回数をみると、「仕事と生活の調和」が33回と、「仕事と生活の両立」の22回をしのいでいる。ちなみに「仕事と生活の均衡」は1回も登場しない。2003年には厚生労働省が「仕事と生活の調和に関する検討会議」を設置し、2004年にはその報告書も出されているので、訳語としては「仕事と生活の調和」が一応の決定版といえるだろうか。
この報告書には「仕事と生活の調和」の定義は出てこないが、文中に「仕事と、生活すなわち仕事以外の活動との調和の判定は、最終的には個々の働く者の主観によることになるとしても、第一義的には、それぞれの活動に配分できる時間(労働時間と生活時間)によって行われることになる。その意味で、仕事と生活の調和が図られている状態とは、一定の制約のある時間帯の中で働く者が様々な活動に納得のゆく時間配分ができるような状態であるということができる。」という記述がある。一応これが、霞ヶ関的な「仕事と生活の調和」の定義と考えていいのだろう。