急上昇する中国の労働コスト

連日の中国ネタですが、報道によれば、労働コストの低さを生かして急速な経済拡大をとげた中国で、その労働コストが急上昇しているそうです。

 中国で労働コストが急上昇している。7月1日から広東省深セン市や北京市などで労働者の最低賃金が10−20%引き上げられ、中国有数の工業地帯を抱える広東省政府も12日、9月1日から平均17.8%引き上げると発表した。安い労働力を武器に急成長してきた中国だが、進出企業は人件費の負担増で中国戦略の見直しを迫られそうだ。
 広東省は経済の成長度合いに応じて各地域で最低賃金を調整。2004年12月にはそれまで企業が別途支給していた医療保険など社会保険料の負担分も最低賃金に含め、労働者の権利確保の姿勢を強調。今回の引き上げで「この2年で合計50%以上の上昇」(同省中山市の日系企業)になるだけに進出企業からは悲鳴も聞こえる。
 広東省だけではない。北京や湖南省なども7月から昨年に続き二年連続で最低賃金を上げた。遼寧省大連市の経済開発区内では8月1日から一気に40%増の700元になるなど、各地方都市で調整が相次いでいる。
(平成18年7月13日付日経産業新聞から)

ちなみに、同日の日経新聞朝刊によれば「広州市の場合、14%増の月780元(約11200円)」ということですから、依然としてかなり安価であることは間違いありません。とはいえ、記事によれば「外資導入を地元経済振興につなげたい地方政府は最低賃金を低く抑えてきた。規定を守らない企業があっても大目に見てきたのが実態だ」ということですから、現実には新しい最低賃金を守らなければならないということになると、引き上げ幅を上回る人件費負担増ということになるのでしょう。やはり記事によると「沿海部に大量の出稼ぎ労働者を送り出してきた内陸部の経済発展で、沿海部と内陸部で労働者の争奪戦が繰り広げられ始めた」ということで、「中国内陸部には無尽蔵の労働力があり、中国の人件費は当分の間上がることはない」という考えで進出した企業としては、たいへんな見込み違いというところでしょうか。
かつては台湾や韓国、その後は東南アジアと、日本企業は海外生産を拡大してきましたが、結局のところ「人件費が安いから」というただそれだけの理由で海外進出した企業は、案外うまくいっていないのではないでしょうか(たとえばアイワのように)。中国はそうはならない、と思われていたわけですが、案外同じ轍を踏む可能性もあるかもしれません。
ところで、記事によれば現地の平均月給は2005年で約2800元(約40200円)ということのようです。引き上げ前の最低賃金の4倍以上で、やはりかなり格差の大きい社会だということでしょうか。