なに考えてんだか

今朝の東京新聞の1面で、「扶養控除 成人ニート対象外に」と大々的に報じられていました。他紙の追随はないようなので若干疑わしいのですが、本当なんでしょうかね?

 自民党税制調査会柳沢伯夫会長)は21日、少子化対策としての子育て支援減税の財源を確保するため、所得税の扶養控除(1人当たり38万円)に年齢制限を新設し、成人したニート、フリーターを対象から外す方向で検討に入った。現行制度は、成人した子どもが経済的に自立しないまま、親が生活費を負担しているケースも控除対象となっているため「子育ての負担軽減という趣旨から外れる」(税調幹部)と判断した。 
 少子高齢化による労働力の減少を補うため、ニート、フリーターを抱える世帯の税負担を増やすことで、若年層の本格的な就労を促進する狙いもある。現在は収入が一定以下の親族であれば、年齢に関係なく扶養控除の対象となる。
 控除対象から除外した場合、サラリーマンと専業主婦の夫婦が年収130万円以下の成人したフリーター1人を扶養する世帯の納税額の増加は、年収500万円で約3万円、年収700万−1000万円で約7万円の見込み。
 政府の経済財政諮問会議が6月にも策定する歳出・歳入一体改革に合わせて、党税調がまとめる税制改革の論点整理に盛り込む見通しだ。
 扶養控除の対象とする子どもは(1)高校生を想定し18歳以下に限る(2)大学や大学院への進学も考慮して23歳や25歳までとする−など複数の意見がある。具体策は子育て減税の内容や実施時期とも絡むため、政府・与党で調整する。
 政府の2005年版の労働経済白書は、04年で25−34歳のフリーターは99万人、ニートは37万人と推計しており、就労促進が大きな課題となっている。
(平成18年5月22日付東京新聞朝刊から)

本気でしょうかねぇ。ちょっと正気を疑う話だと思うのですが……。


そもそも、「成人した子どもが経済的に自立しないまま、親が生活費を負担しているケース」というのは、まさに「子育ての負担軽減」そのものではないかと思います。また、「少子化対策としての子育て支援減税の財源」にするのだそうですが、なにも18歳未満の子どもを対象に減税することばかりが少子化対策ではないでしょう。むしろ、親の多くは子どもがニートになるのではないかという不安感を持っているのではないかと思いますので、扶養控除の対象から外すことはかえって不安感を高め、少子化を促進してしまうという見方もできると思うのですが。
続く「ニート、フリーターを抱える世帯の税負担を増やすことで、若年層の本格的な就労を促進する狙いもある」というところに、なんとなく本音が出ているような感じがあります。自民党のセンセイ方には、フリーターやニートについて「いい年をして定職にもつかず、親掛かりで暮らしている若い奴等はけしからん」「そうやって子どもを甘やかす親もけしからん」という短絡的な不満が依然としてあるのでしょう。もちろん、フリーターやニートの増加は90年代以降、かつてない長期にわたって日本経済が低迷し、企業業績の不振が続いたことで雇用失業情勢が長いこと過去最悪を更新し続けたことが最大の理由であり、「若者や親がけしからん」などという問題ではありません。これはすでに世間のコンセンサスになっていると思っていたのですが、自民党のセンセイ方にはいまだに「求人がないのに就職できるわけがない」という単純な理屈にご納得いただいていない方が多いのでしょうか。
「具体策は子育て減税の内容や実施時期とも絡むため、政府・与党で調整する。」ということなので、政治的には国民の関心の高い少子化対策には取り組まなければならない、その目玉としてなんらかの減税はしたい、しかし財源はない。まあ、雇用保険を使うなどという思いつきまで出てくるのですから、よほど困っているのでしょう。そこで、誤った「パラサイト・シングルけしからん論」を利用して、「どこかに財源はないものか……、そうだ、あのニートやらフリーターやら、その親どものようなけしからん奴等の扶養控除を取り上げるということなら、国民の理解も得られるのではないか」という貧困な発想になったのではないかと、これは私の勝手な想像ですが、そうだとしたらまことに困った話、情けない話ではあります。実際にはこうした誤った「パラサイト・シングルけしからん論」をいまだに主張しているのは一部の高年齢男性くらいになってきているわけですが、一方で政策決定などに影響力を持っている人の多くが高年齢男性であるというのも実態で、それがいまだにこういう発想が出てくる原因なのでしょう。