子どもとお金

「知るぽると」と云われてわかる人はそれほど多くないのではないかと思いますが、これは日銀が金融に関する知識・情報の広報・啓発を進めるために設置している「金融広報委員会」の愛称です。先週の話ですが、その「知るぽると」が実施した「子どものくらしとお金に関する調査」の結果が発表されました。

 「お金が一番大切」と考えている子どもが、中学生で26%、高校生で30%――日本銀行内に事務局を置く金融広報中央委員会が17日発表した「子どものくらしとお金に関する調査」で、そんな結果が出た。マネーゲームで稼ぐことを肯定的にみる割合も中学生30%、高校生41%に上る。同委員会は、子どもたちの金融経済をめぐる知識が必ずしも十分でないとして、金融教育普及に力を入れる方針だ。
 「お金が一番」と答えた割合は、小学生の低学年は25%で、高学年になると12%に減るが、中高で増加に転じる。「小学校時代は家庭や学校での教育が浸透していったん減るが、その後、社会での実体験などを経て変化しているのではないか」と同委員会はみる。
 「お金はコツコツ働いてためるもの」との答えが中学74%、高校66%を占めた一方、「賭け事で稼ぐのは悪くない」も中学34%、高校45%に達し、お金への意識は揺れているようだ。
(平成18年5月18日付朝日新聞朝刊から)

誰が言ったか忘れましたが、「世の中はお金がすべてではない。しかし、大部分がお金であることも事実だ」という名言?があるらしいのですが…。ちなみに結果は「知るぽると」のサイトで公開されています(http://www.shiruporuto.jp/consumer/research3/2005/pdf/05kodomo.pdf)が、「お金よりも大事なものがある」にYesと答えたのは中学生で79.1%、高校生で77.9%で、「一番たいせつ」のYesとあわせると100%を超えてしまいますが、まあ「すべてではない」との意識は高いようです。


その他面白いところでは、「お金持ちはかっこいい」には中学生の60.5%、高校生の59.4%がNoと回答しているいっぽう、「お金をたくさんためたい」には中学生の88.9%、高校生の90.4%がYesと回答し、「お金をもうけられるのはすばらしい」には中学生の63.7%、高校生の75.8%がYesと回答しています。お金持ちをかっこいいとは思わないけれど、かっこよくなくていいからお金をためたい、もうけたいということでしょうか。まあ、「たくさんためる」は貯蓄奨励で、必ずしも「お金持ちになる」ということではないのかもしれませんが。
また、「子どもたちの金融経済をめぐる知識が必ずしも十分でないとして、金融教育普及に力を入れる」については、金融に関する知識についての文章の正誤をたずねています。
その結果をみると、中学生の正答率ワーストは

1位 契約はすべて書類に記名し、印を押すことで成り立つ× 12.3%
2位 家計に占める教育費の割合のことをエンゲル係数という× 15.7%
3位 金融政策を行うのは、日本銀行である○ 23.2%
3位 代金前払い方式のカードをクレジットカードという× 23.2%

うーん、まあ、中学生がひっかりそうな問題ではあります。クレジットカードとプリペイドカードを間違うのは中学生とはいえいささか淋しい感はありますが。それよりなにより、「3位 金融政策を行うのは、日本銀行である○ 23.2%」は日銀としてはちょっとツラいかも(笑)。誤答者の相当割合は政府が金融政策を行っていると考えているとすると、これは独立性をなにより重視する日銀には「ちょっとツラい」どころじゃないか。
高校生はというと、

1位 日本銀行の金融政策は、現在、主にオープンマーケットオペレーションである○ 20.8
2位 契約はすべて書類に記名し、印を押すことで成り立つ× 22.4
3位 1,000円についた50円の利子を含めて年利5%で1年預けると約52円の利子がつく○ 22.6
4位 家計に占める教育費の割合のことをエンゲル係数という× 30.8

1位については要するに「オープンマーケットオペレーション」の意味を知らないんだろうと思うのですが、それにしては正誤の回答ですからいいかげんに答えても半分は正答になるはずで、どういう引っかかり方をしたのかちょっと不思議です。