国家公務員を中途採用

 政府は13日、30歳代を念頭に置いた国家公務員の中途採用枠を100人分程度設ける方針を固めた。
 失業した人や子育てを終えた人が、再び職を求める際の受け皿になることを期待している。「再チャレンジ推進会議」(議長・安倍官房長官)が5月にまとめる中間報告に盛り込み、2007年度にも募集を始める。
 国家公務員試験には、中央省庁の幹部候補となる大卒以上の1種試験、大卒程度の2種試験、高卒程度の3種試験があり、1種は33歳未満、2種は29歳未満、3種は21歳未満で受験資格を制限している。
 今回の中途採用は、30歳代や高卒の受験を認め、採用試験は社会経験を重視して、時事問題を問うたり、考える力を試す作文を課したりすることにしている。採用後は2種、3種の職員と同等の扱いを想定しており、年齢を考慮して、一番下の係員ではなく、主任や係長からスタートさせることを検討している。ただ、政府は06年度から5年間で国家公務員を5%純減する目標を掲げており、人事院では「社会経験が豊富で、有為な人材に限って採用したい」(幹部)としている。
(平成18年5月14日付読売新聞朝刊から)

「社会経験が豊富で、有為な人材に限って」とはいいますが、これは明らかにフリーター対策でしょう。つい先日のエントリ(http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20060511)でも正社員雇用の増加が大事だという話題を取り上げましたが、まずは行政自ら率先垂範しようということでしょうか。


ただ、正直なところ大いに遅きに失したかな、という感はあります。このブログを始める前、「労務屋」ホームページなどで繰り返し主張してきましたが、若年の雇用情勢がどん底だった「就職超氷河期」にこそ、公務員採用を拡大すべきだったのではないでしょうか。もちろん、財政状況がきわめて厳しい中で公務員を増やすという議論はなかなかしにくかったのでしょうが、環境保全(たとえば営林署とか)や治安維持(警察とか海上保安庁とか)のための人員は明らかに不足していたわけで(桶川ストーカー事件などで警察が叩かれていますが、根本的な問題は警察官の怠慢ではなく警察官の人員不足のはずです)、しかも警察官の採用試験などはどの県でも軒並み十数倍から数十倍の応募者が殺到していました。増税してでも(もちろん一時的なもので、したがって応能負担で、景気回復すれば税収が増えて吸収できる範囲でやれればより望ましい)こうした分野で採用を増やしても、国民の理解は得られたのではないでしょうか。少なくとも、巨額の国債を発行して衰退産業の建設業に大盤振る舞いをして必要性も経済効果も低い(しかし維持費用はかかる)社会資本をつくりまくったオブチノミックスに較べれば、同じ借金をするにしてもはるかにマシな使い道だったのではないかと思いますが。
今となってはますます財政状況が厳しくなり、国家公務員の削減が求められるまでになっていますから、当時に較べてもはるかに公務員の採用増はやりにくくなっているでしょう。まあ、全体が増やせなくても、とりあえず新卒は民間の採用が拡大しているからそちらにまかせて、公務員は新卒をあまり採らずにフリーターの正規雇用化を少しでも増やそうというのは、それはそれで一定の意義はあるだろうと思います。
ただ、公務員人事の年功序列にあわせて「主任や係長からスタート」させるとなると、それに応じた人材を採るのはかなり高いハードルになるでしょう(なるだろうと思うのですが)。実際にはヒラの係員並みの能力の主任や係長がたくさんできることになりそうで、そこまでしてまで年功序列を維持しなければならないのでしょうか。手続きが面倒だというのはわかりますが、年齢ではなく勤続年数で管理することにすればずいぶん話は簡単になると思います。生計費への配慮もわかりますが、しかし、30代でヒラであっても、正規雇用、しかも安定した公務員として就職できるのであれば、賃金は18歳並でもかまわない、というか大喜びという人も多いと思うのですが。
もっとも、周囲からみていかにも物足りない人が公務員として採用された、というのは、それはそれでたしかにまずいでしょうから、やはりそこそこには「社会経験が豊富で、有為な」といえそうな人を採らなければならないでしょう。となると、やはり「フリーター時代をいかに過ごしたか」が問われる時期に入ったということになりそうです。