若年者雇用の指針

もう1日引っ張ります(笑)。先週月曜日(6日)の雇用対策基本問題部会の会合では、その前回(9月27日開催、http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20060927で若干コメントしました)に提起された、若者の雇用について「国は事業主が適切に対処するための指針を策定する」ことについてのディスカッションも行われました。資料には

○ 事業主の責務

 現行法において、(1)再就職の援助、(2)募集・採用時の年齢制限の是正、が事業主の努力義務とされているが、これらに、若者の能力、経験の正当な評価及び採用機会の拡大等を加えるとともに、国は事業主が適切に対処するために必要な指針を策定すること等が考えられる。

とあります。そして、指針の内容として具体的に考えられているのは、通年採用の実施、既卒者の新卒採用枠での採用、高年フリーターの人物本位での採用、トライアル雇用の活用、といったことだという説明がありました(うろ覚えなので自信なし)。
http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20060927でも紹介したとおり、経団連も経労委報告で「人物本位での採用」を訴えていますし、基本的な方向性としてはそれほど違和感はありません。「若者の能力、経験の正当な評価」なんてのは、若者に限らずあったりまえのことですし、「フリーターだからといって一律に門前払いするな」という趣旨であれば多いに賛同するところです。ただし、これが「職歴は一切見るな」とか、「新規採用時には高年フリーターを何%以上採用せよ」とかいう方向にエスカレートするのは困ります。同じフリーターといっても、フルタイムで週6日、ファミリーレストランの店長をやっていたフリーターと、週3日1日4時間コンビニで働いてましたというフリーターでは、当然「能力、経験の正当な評価」に大差がつきます。フリーターは非常に多様ですから、当然ながら職歴は重視せざるを得ません。
「採用機会の拡大」というのも、事業の拡大、企業の成長を通じて雇用機会を拡大するというのは、多くの企業にとっては当然すぎるくらい当然のことなので、こういうレベルの一般論にとどまる限りは賛成しない理由はありません。ただし、事業の状況の如何にかかわらず、今年の若年雇用を昨年より増やすよう努力しろ、ということになると問題があります。
通年採用にしても、多くの企業が実施しているところでもあり、指針で努力を求められるくらいのことであればそれほど抵抗はないわけですが、とはいえ、現実の新卒採用の実態はかなり短期集中になっているのも事実であり、やはりある時期になって「今年の採用予定数は終了したので、あとはいい人がいれば若干名採用するにとどめる」という対応を取らざるを得ない状況は十分に考えられます。年間通じて、常に一定レベル以上の求人・採用を行わなければならないとするのは行き過ぎだろうと思います。
既卒を新卒応募枠で採用する、というのも、いわゆる「第二新卒」(いったん就職はしたものの特段の知識や経験を有するわけではなく、企業もそれを承知の上で、新卒者と同様の内部育成を前提に採用する人)の採用は現に盛り上がっているわけですから、とりあえず指針で努力を求められてもさほど抵抗感はありません。ただ、第二新卒には卒業後の職歴や前職を辞めた理由など、新卒者とはまた異なった確認事項がありますから、採用プロセス(会社説明会や選考試験、面接など)まで新卒と同じ(混合で)実施しろ、と言われるのは困ります。あと、景気が悪化して買い手市場になったときには、既卒を新卒応募枠で採用させようとしても、長期勤続を期待する正社員については、より長い勤続が期待できる新卒が有利となって、既卒の採用促進効果はかなり限定的なものになるでしょうが、それはそれで致し方ない(既卒にも機会が与えられることが重要で、結果までは求めない)としてもらわないと困ります。
具体的な指針案の文面が出てこないことには突っ込んだ議論もできませんが、企業を縛るのではなく、経団連も経労委報告で書いているように「フリーターだからと一律に門前払いしていると、思わぬ逸材を逃してしまいますよ」という啓発を中心としたものにしてほしいものです。