一昨日、昨日の続き

きのうのエントリについて、平家さんからあらためてTBをいただきました。おおむね、きのうのご説明でご理解いただいたようですが、若干の追加的なご質問がありましたので、もう少しご説明したいと思います。

ケース1 人員削減は、定年退職や自己都合退職で対応し、新規採用は中止する。
これで5%削減できるのであれば、確かに実行可能です。
ただ、その場合、「官」は、若い人を一定数採用することができず、組織の活力を維持できなくなる可能性があります。国鉄で5年(くらいだったと記憶しています。間違っているかも知れません。)採用を停止し、その後も採用を抑制した結果、人員構成にゆがみができ、さまざまな問題が発生したという例もあります。職場に若い人がいないことは組織の活力を奪います。これは、保守親父@労務屋さんにもお認めいただけると思います。官に活力を失わせることは長期的には、大きな問題が発生するおそれがあると思います。

私は、とりあえず5年で5%という規模の人員削減であれば、自然減で対応するのが最善ではなかろうかと思います。4月24日のエントリでも書きましたが、国鉄民営化とは規模が違います。たしかに、自然減は人員構成や活力などの面で組織に望ましからざる影響を与えますが、雑に計算して勤続40年の単純平均で毎年2.5%、5年で12.5%が定年退職する計算で、実際にはもっと少ないだろうとは思いますが、新規採用ゼロが必要となるほどの規模でもなさそうなので、トータルで考えればそれがいちばん賢明なやり方のように思います。


平家さんは「官にとって戦力になる、ならない」、「官の人材育成の責任」にまだこだわりとお持ちのようですが、私が申し上げたいのは、仮に本人の意に反して免職させられる人が出た場合、当然ご本人としてみれば「こんな私に誰がした」と言いたいだろう、ということです。まあ、もちろん本人の責任だってあるわけですが、これまでの日本の人事管理(その善悪はともかくとして)では、組織の責任も免れないのではないでしょうか。

第二の疑問です。実行可能性の話に戻ります。ケース2を実行可能にしようとするなら、政府が退職国家公務員の再就職先を斡旋するしかないのではないでしょうか?そのとき、受け皿になるのは、民間企業しかありえません。

これはご指摘のとおりで、自然減で対応できない規模の人員削減が必要になるのであれば、もちろん民間企業への斡旋が現実的な対処方法になるでしょう。ただ、元に戻りますが、24日のエントリで申し上げたように、「官が要らない人を民間が受け入れよ」という単純な図式では、民間企業がスリム化に取り組む中では経団連も当然難色を示すでしょう。民間への斡旋は、民間に需要があることが前提になります。受け入れるかどうかの判断は当然受け入れ側に任されるべきですし、送り出す側は受け入れられる人材を送り出す努力が必要になるでしょう。国鉄民営化の際には、受け入れ職場で必要な知識を国鉄が教育するという取り組みも行われました。
なお、希望退職募集も有力な選択肢のひとつだと思います。そのとき、いちばん優秀な人から順に退職していくのかどうかはちょっと見当がつきません。民間企業の場合だと、再建可能なケースであれば、企業内での評価が高く、再建後のキャリアが期待できる人は希望退職せず、その次のクラス、優秀ではあるけれども最高の評価は受けていない、再建後のキャリアも大きくは期待できないかもしれない、という人が応募することが多いと言われています(これは希望退職に限らず、転職全体にそういう傾向があるそうです)。それが、「希望退職を募集すると優秀な人から辞めていく」と言われながら、現実にそれで困ったという話をあまり聞かない理由だそうですが、官の場合は将来のキャリアがどうかという部分が民間と違うかもしれないので、ここはなんともいえません。

第三の疑問です。保守親父@労務屋さんは「人事制度や組織を見直して、アダプタビリティやフレキシビリティを確保できる仕組みを再構築することが必要なのだろうと思います。」とおっしゃいますが、それがどんなことなのか良く分かりません。国の人事制度や組織の改革はそう簡単にできるものではないでしょう。法律を変えなければならないのですから、民間よりも手間がかかります。それは5年間に5%減らすのに間に合うのでしょうか?遅くても5年5%を決めるときに同時に再構築しておかなければならないでしょう。それは無理ではないでしょうか?

もちろん、今回の5年で5%に間に合うわけはなく、もっと長い目でみた課題だと思います(繰り返しになりますが、私は今回は自然減で対応するのが現実的かつ賢明であると考えています)。
というわけで、やるべきことは民間が取り組んでいることとそれほど変わるものではありません。OJTを含む職業訓練によって職種転換を可能にしていくこと、有期雇用などを組み合わせて業務繁閑に効率的に対応できるようにすること、労働条件をより柔軟に変更できるようにすることなどで、一部はすでに官でも行われているものです。法改正が必要なことはたしかですし、民間に較べて時間もかかるでしょうが、それはやらなくていい理由、先送りしていい理由にはならないだろうと思います。