削減対象公務員の民間受け入れ

国家公務員の削減が議論されていますが、それに関連して、削減された公務員の民間企業での受け入れを求めようという話があるようです。

 日本経団連奥田碩会長は24日の定例記者会見で、政府の公務員数の純減目標に関連して「民間企業が(削減対象となった公務員の)受け皿になることはできない」と述べた。政府が転職希望の公務員の受け入れを求めても「(経団連として)応じることは考えていない」と表明した。
 公務員受け入れに否定的な理由について「民間企業はスリム化を一生懸命やっているわけで、そこに強制的に来られても大変だ」と強調。産業界では人手不足への懸念が出ているが、総じて高齢な官の余剰人員を受け入れる余地は少ないとの見解をにじませた。
 政府は今後5年間で5%以上の公務員を純減させる目標を打ち出した。奥田会長はこの数値目標に関して「定年退職と新規採用の抑制で相当部分は稼げる。それに配置転換を考えればよい」と指摘。政府自身の経営努力で目標達成が可能との認識を示した。高級官僚の再就職についても、「適当な規制や規則をつくるべきだ」とし、天下りの規制強化を求めた。
 1987年の国鉄民営化の際には当時の経済4団体を通じ、約2万5千人の国鉄職員が民間に再就職した経緯がある。政府は今回も経団連などに公務員の受け入れを非公式に打診していた。
(平成18年4月25日付日本経済新聞朝刊から)

定年まで40年勤務するとすれば、単純計算で毎年2.5%の人が定年退職することになります。たしかに、これを不補充とすれば、5年間で5%の人員削減は自然減で十分に対応できる計算になります。27万人を18万人に削減した国鉄民営化とは事情がかなり違うといえましょう。
いっぽうで、記事にもあるように民間は人手不足の傾向にあるわけですから、なにも経団連があっせん(政治献金みたいだ)しなくても、それなりの人であれば十分に再就職は可能なのではないでしょうか。「総じて高齢な官の余剰人員」というのは、要するに官にとってあまり戦力にならない人を放出したいということであり、そういう人は労働市場を通じた再就職は難しかろうということで、経団連にあっせんを要請するということでしょうから、それでは経団連が受け入れに難色を示すのも当然といえましょう(「ということ」がやたらに多い文だな)。
公務員、それも国家公務員というのは一般的に就職人気も高いわけで、であれば(少なくとも就職時には)それなりに優れた人材が集まっているはずでしょう。それが戦力にならない余剰人員になってしまったのは、官による人材育成のまずさの責任もかなりあるはずです。それを民間に転嫁しようというのはいかにも手前勝手なように思います。
もし、自然減以上に人員を削減しようとの意図が官にあるのであれば、労働市場を通じての転職が十分に可能な人を削減するといった配慮が必要なのではないかと思います。