短時間正社員の中吊り広告

最近、電車の中吊り広告で「ライフスタイルに合わせた働き方『短時間正社員制度』を考えませんか?」という厚生労働省のPRを見かけます。ポスターもあるようです。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/03/tp0308-2.html
ワーク・ライフ・バランスをはかるための有力な手段として普及させたいとの意図があるようで、3人の「短時間正社員」のイメージで構成されているのですが…

  • 9:00〜14:00(5h)「ボランティア活動に励んでいます」壮年の男性
  • 9:00〜15:00(6h)「子供に接する時間に使っています」若い女
  • 10:00〜16:00(6h)「介護する時間ができました」熟年の男性

「短時間正社員」がどの程度フィージブルなのかは別の議論としても、ちょっと「なんだかなぁ」という感じのするPRではあります。


というのも、これらのイメージには勤務時間帯と労働時間が示されているのですが、いずれも「昼休み」がないのです。もちろん、労働基準法上は労働時間が6時間までなら休憩時間を設けなくてもいいのですが、それにしても9:00〜14:00とか10:00〜16:00とかで働くのなら、当然その中にはほかのフルタイム正社員の昼休みが含まれるでしょう。短時間正社員には、他の正社員が弁当を広げて食べていたり新聞を読んでいたりするかたわらで仕事を続けることを奨励しようということなのでしょうか。それとも、この5hとか6hとかは労働時間ではなく、在場時間なのでしょうか?「短時間正社員」というからには労働時間でなければ話が合わないと思うのですが…。
それから、これを都心の電車内でPRするというのもどんなもんなんでしょうか。いかに労働時間が5時間、6時間だとしても、通勤に往復3時間、4時間かかってしまったのではボランティアや育児、介護に十分な時間をあてることは難しいでしょう。短時間正社員と職住近接は基本的にセットなのであり(これは短時間正社員に限らず、通常のパートタイマーでも同じことですが)、だとすると遠距離通勤者の多い都心の電車でPRするのは場違いという感じがします。かえって短時間正社員制度の限界をPRしてしまっているのではないでしょうか。これが例えば短時間勤務終了後に近くの社会人大学院とか英会話学校に行くとかいうのであればまだしもだったのですが…。
ちょっとお役所のPRのセンスを疑うような広告でした。