中国進出企業に頭痛のタネ?

ちょっと古いのですが、年末のJETROの「通商弘報」から。中国の注目ビジネス・トピックスの記事です。

 10年間で無期限雇用義務が発生−進出企業は労務・人事管理の見直しを− (中国)
 90年代初頭に日系企業の第2次進出ブームが発生したが、当時進出した企業の現地経営が10年を超えようとしている。労働法では10年間同一企業に雇用された従業員は、11年目の契約から無期限雇用契約(定年までの終身雇用契約)を提案する権利を有し、企業はこれを拒否できない。これに該当する進出企業は非常に多く、この問題に関心を寄せる企業が増えている。
(平成17年年12月26日付「通商弘報」(web要約)から)
http://www.jetro.go.jp/biz/world/asia/cn/topics/38069

うーむ。これはなかなか大変です。労働力の安さだけを理由に中国に進出した企業は、ちょっとアタマを抱えているのではないでしょうか。


もちろん、現時点ではまだ中国では監督者、熟練工が不足する傾向にあるわけで、各社とも苦労して育ててきた勤続10年の監督者(候補)、(ある程度の)熟練工を簡単に解雇するつもりはないでしょう。しかし、それでは終身雇用といくかどうかは悩ましいところで、現にあれほど安い安いと言われてきた中国沿海部の賃金も、近年ではかなり上がってきていて、最近では人件費の安さを求める企業はベトナムなどに進出先を変えてきています。これからこの調子で中国の人件費が上がり続ければ、20〜30年後には中高年の人件費の高さに苦しむという可能性もないわけではありません。中国市場への販路拡大を考えているのならば賃金上昇とともに購買力も拡大するでしょうから、さほど心配するほどのことではないでしょうが、輸出基地として立地している場合はそうは行かないでしょう。巨額の設備投資をしている場合は撤退も簡単ではないでしょうから、結局のところ、10年経ったところで継続する(長期雇用になる)人と、そうでない人との選別がシビアに行われるということになるのでしょうか。
いずれにしても、単に人件費が安いからというだけで海外進出すると、多くの場合はこうした問題が発生するのではないでしょうか。かつて東南アジアに積極的に進出し、「円高時代の為替フリー経営の優等生」などと言われていたアイワがどんな末路をたどったかを考えると、中国進出企業もなかなか容易には考えられないのかもしれません。
それにしても、ベトナムの賃金が上がりはじめたら、今度はどこに行くのでしょうね?それなりに政情はじめ社会的インフラが安定し、一定の教育水準の労働力が多数存在し、賃金が日本の20分の1という国は、世界中探せばまだまだあるのでしょうか?