ひょっとして読んでます?

電機連合も来春闘での2,000円の賃金改善要求を決定したということで、日経新聞は今朝も「来年こそ賃上げ」という熱い(?)記事を書いています。それはそれとして、塩田宏之解説委員の署名がある解説記事を読んで、ちょっと驚きました。

…名目を「賃金改善」に変えたのは物価上昇を見込みにくいうえ、賃金制度そのものが成果重視型に変わったためだ。
 大手企業の場合、かつての賃上げ交渉では年齢とともに月給が上がる定期昇給(定昇)とベアがセットになっていた。労働組合は定昇実施を前提として、物価上昇や生産性向上を根拠にベアを要求してきた。
…現在、企業の業績は上向いているが、物価上昇を理由としたベア要求はしづらい。加えて経営側はベアという言葉に強い拒否反応を示している。「業界横並びの年中行事で、社員間の格差もつけにくい」という硬直的なイメージが強いためだ。
 そこで労組側はベアという「名」を捨て、まず組合員全体の賃金原資を積み増す「実」を取る戦術に転換し始めた。個々の社員への配分方法は、各社の労使が個別に話し合うことになるだろう。
…今回の賃上げ要求は一律的なベア復活とは似て非なるもので、成果主義時代の賃上げを模索する動きといえる。
(平成17年12月8日付日本経済新聞朝刊から)

うーん、なんか見覚えあるような・・・


なーんちゃって(笑)。もちろん、すぐに気付きましたとも。この解説記事、このブログの昨日のエントリととてもよく似ていませんか?
まあ、誰でも考え付くことなので、偶然の一致(というか必然の一致というか)だろうと思いますし、本音ベースで日経と同じというのは格別うれしくもない(悲しくもありませんが)わけではありますが、ひょっとして読んでます?なんて思ったりもして。そんなことないかな。
まあ、読まれている可能性があるのなら、これからますます気合を入れて叩くことにしよう(笑)。
それはそれとして、従来だってベアは必ずしも一律に配分していたわけではなく、成績配分は当然あったわけですし、それ以外にも、たとえば若年層に厚く中高年に薄くすることで賃金カーブを寝かせる、なんてことは普通に行われてきたのではないかと思うのですが。もちろんこれは労組とも協議のうえでやってることが多いわけで、労組だって承知のことではなかったかと思うのですが。
まあ、労組がこういう言い方をするのは戦術としてはありうる(経団連も昨年の「経営労働政策委員会報告」で「ベアではなく賃金改定と称するべき」みたいなことを言ってたと思いますし)のだろうとは思いますが、それにそのまま乗ってしまうのはどうかな・・・という気がしますが、まあ日経としては「賃上げをリード」したいということで労組に乗っているのでしょうか。
それから、これもこのブログで繰り返し書いてきましたが、個別企業で「定昇、ベアの概念はなくなった」というのはもちろんご自由です(各企業で任意に定昇やベアの定義を決めればいいだけの話なので)。とはいえ、賃金の技術論としては、賃金カーブが右肩上がりのプロファイルになっている以上、定昇相当分(=賃金カーブの平均変化率)もベア(賃金カーブの上方シフト)も計算上自動的に出てくるものです。個別企業の言い分を引いて、あるものをないといってみても仕方ないと私は思うのですが。