18日の産経新聞によると、朝日新聞で社内暴力事件があったことが発覚したそうです。
朝日新聞社（東京都中央区）の男性社員（43）が、小泉純一郎首相の靖国参拝を報じるテレビのニュース番組を社内で見ていて別の男性社員（35）と口論となって暴行し、腰に全治10日の軽傷を負わせていたことが17日、分かった。警視庁築地署は18日にも、傷害容疑でこの男性社員を書類送検する方針。
調べでは、10月18日午前10時50分ごろ、小泉首相の靖国参拝を報じるニュース番組を見ていた二人が是非をめぐり口論となり、43歳の男性が相手を強く押さえ付けたり、頭突きをするなどの暴行を加え、けがを負わせた疑いがもたれている。
暴行された男性が携帯電話で110番通報しようとしたのを止めようとして、さらにもみ合いになり携帯も壊れたという。その後、この男性が社外から通報するとともに、築地署に被害届を提出していた。
二人はともに社内の「総合研究本部世論調査部」に所属しており、参拝の是非に関する世論調査にも関係していたとみられる。
朝日新聞広報部の話「二人の社員がもみ合いになり110番通報したのは事実。軽微な事案と認識している」
（平成17年11月18日付産経新聞朝刊）
見出しには「靖国参拝是非めぐり、朝日“内紛”」となっていますので、調査方法などではなく、参拝の賛否そのものが対立したのでしょう。43歳と35歳という年齢から想像するに、35歳の青年（？）が首相の参拝を容認（または積極的に支持）する発言をしたのに対し、43歳のベテランが「貴様はそれでも朝日の社員か！」と憤激して暴行に及んだ…という光景が目にみえるようです（見てきたような…というヤツですねぇ）。
さて、朝日新聞はこの事件を「軽微な事案と認識している」ようです。職場内の「けんか」ですから、好ましいことではないにしても、加害者を解雇して社長が頭を下げるような重大な問題ではないでしょう。
とはいえ、いかに「けんか」とはいっても警察沙汰になり、書類送検までされているのですから、それなりの社内処分は当然あることでしょう。朝日新聞が「軽微な」と言っているのは、この件を公表しなかったことに関してだろうと思われます。内輪のけんかをどうして公表しなければならないのか、というわけです。まあ、そのとおりだろうと思いますが、送検されてしまったとなると表沙汰になるのも致し方ないところでしょう。
- 当然ながら、これが社外者に対して暴行して書類送検されたのであれば、とうてい「軽微」ではすまないでしょう。負傷の程度が軽いので社長が頭を下げるとまではいかないかもしれませんが、警察沙汰になって送検されたとなれば、悪くすると解雇まであるかもしれません。評判を落とすなど会社にも損害が及びますから、社内処分もかなり重いものになるはずだからです。
さて、外向きには「軽微」だとしても、内向き=社内的にはどんな扱いになるのか、というのが人事管理的には興味深いところですが、当然ながら社内処分が表に出てくるのは、よほどの不祥事でないかぎり考えられません。
したがって推測するしかないわけですが、懲戒処分の考え方は基本的に各社各様で、それぞれのポリシーにしたがって実施すべきものですから、とりたてて一般的な基準があるわけではなく、「社内のけんかで懲戒解雇というのは常識的に考えて過酷に失して無効だろう」といった「権利の濫用」の判例法理があるくらいのものです。
ただ、人事管理的に当然ながらポイントとなるのは、今回の「けんか」が純粋には内輪でおさまらず、警察沙汰になってしまったということは、情状を重くするであろう、ということです。逆にいえば、身内のけんかを警察に通報したということは、被害者の怒りがそれほど強かった、ということにほかならないでしょう。
さらに、もうひとつやはり当然ながらポイントになるのが、この一件が結局は新聞沙汰になり、世間に広く知らしめられたことは、やはり情状を重くするであろう、ということです。ざっとみたところ、この事件が産経新聞以外の全国紙で報じられた形跡はなく、朝日＝産経というおなじみの図式でちょっと笑えるものがありますが、まったくの想像で深読みすれば、被害者が確実に報道するであろう産経新聞に内通？したのでは…などという空想をたくましくすることもまったくできなくもないでしょう。まあ、まったくの空想ではありますが…。
はたして、本件の朝日新聞での社内処分はどうなるのでしょうか。当然ながら、ことはそう単純ではなく、報道されないさまざまな事情のあれこれがあるでしょうし、いずれにしても外部からはうかがい知ることはできないわけではありますが、それはそれとしてなんとも興味深い？ものがあります。
