どういう青田買い

さて昨日の続きですが、きのう日経社説に出てきた内定率を、朝日新聞はこんな記事にしています。土曜日の紙面から。

 来年春に卒業を予定する大学生の10月1日時点の就職内定率は、過去2番目に低い59.9%となった。大手企業は、外国人留学生や既卒者にも視野を広げ、優秀な人材を厳選して採っており、就職戦線は依然として厳しい。大学側は、人気が集中する大手だけでなく中小企業にも目を向けるよう、学生への働きかけを強めている。
…就職情報会社ディスコの約1千社を対象にした調査では、来年度に留学生が入社する予定の企業は前年度比11ポイント増の24%に達した。留学生の採用は海外が主戦場の電機メーカーなどは早くから力を入れていたが、小売り、建設など国内中心の業界にも広がってきた。
 さらに一部の大企業は、政府の「大卒後3年間は新卒扱いに」との呼びかけもあり、既卒者の採用を増やしている。日本経済の長期低迷と国際競争の激化で、「多様な人材がいないと生き残れない」(大手小売り)という危機感が高まっていることが背景にある。
 衣料品店ユニクロ」のファーストリテイリングは「新卒の一括採用だと同じような人ばかりになる」(柳井正会長兼社長)として採用方法の抜本的な見直しを始めた。3〜5年後に東京本部の社員の半数を外国人にする考えだ。
 新卒学生にとっては、留学生や既卒者とも採用枠を奪い合うことになる。一方で、企業側の採用者数全体は、なかなか大きくは増えない。就職情報サイト「リクナビ」の岡崎仁美編集長は「リーマン・ショック後、有力な大企業は2000年代前半のような『厳選主義』に回帰し、幹部候補生だけを採る方針を強めている」と話す。
平成23年11月19日付朝日新聞朝刊から)

ということで朝日のほうが比較的現状認識が正確で(まあ留学生が新卒と採用枠を奪い合うというほどのボリュームとは思えませんが)、結局採用者数が増えなければ新卒一括だろうが既卒採用をやろうが乏しい枠を争うことに変わりはありません。「幹部候補生だけを採る」というのは、しかし幹部だけで組織は機能するのだろうかという気はするわけですが。
さてファーストリテイリングが「採用方法の抜本的な見直しを始めた」ことについては、別の面に柳井社長のインタビュー記事がありました。

 カジュアル衣料最大手のユニクロを展開するファーストリテイリングは、来年にも大学新卒の一括採用を見直す検討に入った。従来の慣行にとらわれない採用方式が、企業に広がる可能性がある。柳井正会長兼社長が朝日新聞のインタビューで明らかにした。
 現在、同社は国内では年1回採用を行っている。新しい方法では、採用時期を通年とし、選考する学年も問わない方式を検討している。柳井氏は「一括採用だと、同じような人ばかりになる。1年生の時からどういう仕事をするか考えて、早く決められる方がいい」と話す。
 具体的には、1年生の時点で採用を決め、在学中は店舗でアルバイトをしてもらい、卒業と同時に店長にするといったコースが想定されるという。
 また、現在は外国人社員は主に各国の店舗などで働いているが、東京勤務の外国人も増やし、3〜5年後には東京本部の社員の約半数を外国人にする考えという。現在の日本の採用形態では、東京本部が必要とする多様な人材を取りにくいことも、採用方法変更の背景にあるとみられる。
平成23年11月19日付朝日新聞朝刊から)

いやこれってどういう青田買いなんですか。1年生に内定を出すってことですよね?しかし、1年生に内定を出して、卒業までユニクロでアルバイトさせるなんてことをしたら、最初は多様でもその間にどんどん画一化してしまうような気もするのですが。
あるいは、1年生に内定を出すということはその後が長いだけに内定辞退の危険性も高いわけで、まあファーストリテイリングが立派な企業だということには異論はないにしても就職人気がもっと高い企業は多々あるわけで、昨日書いたのと同じメカニズムで出来のいい内定者から順により魅力的な企業に逃げていくことになるでしょう。となると、あちこち受験してみたけれど失敗して結局はファーストリテイリングが一番魅力的な就職先でしたという人たちが入社することになるわけで、これはかなり画一的な集団じゃないかと思わなくもありません。むしろ、一括採用だからこそ意図的に多様な人材を採用できるという面もあるのではないでしょうか。
というか、「私ユニクロの内定持ってます」というのを自己PRの売りにして他社を受験する学生、たくさん出てきそうだなあ。まあこれは悪い話ではないと思いますが。
いずれにしても1年で内定となるとファーストリテイリングは大学教育に何の期待もしていませんということになるわけで、大学関係者にはつらい話でしょうね。