- 作者: 八代尚宏
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2005/06/01
- メディア: 単行本
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実際、官営と民営が長期にわたって双方がそれなりの規模で並立してきた分野(衣料、保育など)においては、官業の非効率が明らかに示されています。
目立ったところを紹介しますと、たとえば病院における給与の官民格差は、医師においては大差ない(わずかに民間が低い)ものの、看護師で22%、准看護師で49%、薬剤師で37%、事務職員で43%、それぞれ高くなっているとういことです。驚くべき格差ですが、さらに驚いたことには、効率病院ではなんと准看護師のほうが看護師より平均給与が高いのです。かねてから准看の賃金水準の「低さ」が問題視され、正看と准看の統合の必要性が訴えられている国の話とは思えません。もちろん、年齢構成の違いなどを考慮する必要はあるでしょうし、現実の仕事は正看も准看も変わらない、ということも事実でしょうが、それにしても受けた教育が異なり、正看の指示を受けて従事する准看のほうが平均給与が高いというのは、いかに官業の人事管理が年功的でいいかげんかということではないでしょうか。極端な表現ですが、公立病院に投じられている巨額の補助金を、職員が分け取りしているとすら言いたくなります(いっぽうで、事務職員はともかく、看護師がたいへんなハードワークであることも事実ですが、職員の賃金水準が労働との見合いでどうか、という話はこれとは一応別問題です。為念)。
また、保育所についても、公立は私立に比べて延長保育や休日保育などのサービスが劣っていることや、保育の質の問題を考慮してもなお公立は私立より非効率であるという分析結果も紹介されています。こちらも人件費をみてみると、やはり公立保育所の賃金は私立より約3割高いとのことです。保育施設はたしかに増えていますが、待機児童は減っておらず、さらに膨大な潜在需要があるといわれるなかでは、やはり官製市場改革が必要だということになるでしょう。
その他、水道事業の民営化や海外の例など、私の知らない話も多く、思いのほか面白く読むことができました。繰り返しになりますが、もちろん反対派には反対派の言い分があるでしょうが、いい勉強になりました。