- 作者: 中村圭介
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2005/05/20
- メディア: 単行本
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企業の人事管理がどのような考え方で構築され、運用されるかは必ずしも単純ではないと思いますが、「仕事管理との関係」というのはたしかに最重要の観点(とりわけ実務的には)でありましょう。さらに、その「仕事管理」をいわゆる「管理のサイクル」との関係でとらえたのもすぐれた着想だろうと思います。人事管理、とりわけ評価については、おもに1年サイクルまたは半年サイクル(賞与の場合)のPDCAと関連付けられているケースが多いと思われるからです。そして、この本の結論としては、「仕事管理をいかに人事管理の体系のなかに取りいれるか、あるいはいかに組み合わせて新たな統一的な認識体系をつくりあげるか」が問われるのだ、ということです。
この結論に特段の異論も違和感もないのですが、いささか食い足りない感が残るのは、ひとつは仕事管理がもっぱら業績管理の側面から捉えられていて、人材育成の側面にあまり目が向けられていない(もちろん、随所に言及はあるのですが)ように思われるからかもしれません。
また、仕事管理が主で人事管理が従、というのも、大方はそのとおりなのだろうと思うのですが、ときには逆転することもあるでしょう。第3章で紹介されているのは成果主義といえば誰もが思い浮かべるあの会社(内部暴露本も出ている)ですが、この会社の場合は仕事管理を刷新するために人事管理を先行して改定したという側面もあるのではないでしょうか。聞き取りの結果そうだったのだからそういうことなのかもしれませんが、それにしても「仕事管理にマッチしない人事制度改定だから成功しなかった」という結論ではかすかな物足りなさを覚えます。
あるいは、仕事管理、とりわけフォーマルな仕事管理としてはPDCAサイクルはたしかに重要でありキーポイントでもありますが、いっぽうで日常の業務レベルでは、いつ起きるか、なにが起きるかはわからないけれど、しかし必ず発生してくる変化(小池和男氏のいう「不確実性」)に対する対処というものがPDCAと同様の重要性を持ってきます。デパートの事例などではその一端も示されてはいますが、やはり若干の物足りなさは感じます。
もちろん、編者らはこうしたことは承知のうえで、この本のように焦点を絞って調査したのだろうと思います。研究書ではありますが、ヒヤリングベースなだけに非常に読みやすく、また、事例も仕事管理と人事管理の両面が紹介されていますからたいへん興味深いものがあります。実務家が読んでも十分楽しく学べる本だと思います。