かなりとんでもなさそうな均等法パブコメ

きのう発表された均等法改正のパブコメ、「概要」なのでマトモでツマンネーとは思ったのですが、読んでみるとちょっと不思議な点もありますので、備忘的に書いておきます。なにせ「概要」なので、意味するところがわからない部分が多いのですが・・・。


まず、最初の「男女双方に対する差別の禁止」の(2)のところで、「「仕事と生活の調和」を均等法の理念・目的として規定すべき、男女が仕事と家庭を両立できるための法律として位置づけるべきとの意見が多かった」とあります。もちろん「仕事と生活の調和」は大事な考え方ですが、これを均等法に持ち込むのはいかにも筋違いな感があり、連合の事務局長談話にも出て来たのですが、正直言って意味がよくわかりません(実際、審議会の分科会の議事録を見ていても、労働側委員が「仕事と生活の調和を均等法の目的にせよ」と主張して、公益委員がそれを優しくたしなめるという場面が繰り返されているようです)。
今回、この「男女が仕事と家庭を両立できるための法律」という表現を見て思ったのは、ひょっとしたら「仕事と生活の調和」というのは、連合が主張している「男女雇用平等」をさらに上回る、「男女雇用・家事育児平等」を意図しているのではないか、ということです。思いもよりませんでしたが、女性団体も多数パブコメを寄せているとのことですし、案外そんなこともあるのかもしれません。もちろん、連合の「男女雇用平等」すら現行の均等法の理念とは根本的に異なるわけで、さらにそこに「家庭生活平等」まで入れ込むとなると、これはおよそ均等法とはかけはなれたものになるわけではありますが。
それにしても、これが「仕事と生活の調和とは、あらゆる男女が仕事も生活もすべて平等に分かちあわなければならない」ということだ、という考え方だとすれば、いかにも画一的、硬直的な印象を禁じ得ません。やはり、各人・各家庭によって「仕事と生活の調和」のあり方もさまざまであり、多様な選択を通じて実現されるのが望ましいと私は思うのですが・・・ま、このあたりは、考えるだけならどう考えても自由だとは思いますが。
その後の(4)でも、「すべての職種で男女比率が同数となるようにすべき」というびっくりするような意見がありますが、こうした硬直的な結果平等の考え方というのは一部に根強いものがあるのでしょう。しかし、「すべての職種で男女比率が同数」(よく読むとやや意味不明ですが)を本当に実現しようとしたら、教育段階、とりわけ高等・専門教育段階から男女同数(たとえば工学部機械学科も男女同数、薬学部も男女同数、看護学校も男女同数、・・・・)にしていかなければなりませんが、それは北朝鮮も真っ青の恐るべき国家管理社会(?)になるのではないかと思いますが・・・。
次の「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止」でも、「採用面接での妊娠・出産の有無の質問を禁止すべき」という困った意見が出てきています。実務家としては、妊産婦が禁止されている危険有害業務従事者を募集するときに、妊娠の有無を質問できないとなると、結局女性は全員不合格にするしかなくなってしまうのですが・・・。あるいは、6か月のプロジェクト採用だとすると、うち3か月を産前産後休業で休まれるのはやはり困るわけですし・・・まあ、「合理的理由なくして」ということで、これらが合理的理由とされるのであればいいのですが・・・。
また、「昇進・昇格における査定について、休業や能率低下がなかったものとして取り扱うべき」といいますが、だとすると入社以来十数年間のほとんどを妊娠・出産して過ごせば、ほとんど仕事をしたことのない課長ができあがるということになるのでしょうか?
「間接差別」についても、「合理性・正当性の判断基準として使用者の経済的理由の抗弁を認めないこととすべき」というのは、意味がよくはわからないのですが、人件費の適正化とか、市場価格での採用といったことまで認めないというのは明らかに行き過ぎでしょう。
まあ、もっともな意見も多々あるのですが、全体的に女性労働問題、あるいは女性問題全般について、なんでもかんでも均等法に押し込んで禁止したり義務化したりしたい、という無理な意見がかなり見られるようです。だとすれば、意見をそのまま掲載しなかったのもよくわかります。気持ちはわからないではありませんが、均等法の意義や射程を正しく踏まえた議論を期待したいものです。