残業代を分単位で

今朝の産経新聞に、マクドナルドが時間外手当をタイムカード?どおりに1分単位で支払うとの記事が掲載されていました。

 日本マクドナルドホールディングスは1日、直営店舗で働くアルバイトの賃金と社員の時間外手当の計算方法に誤りがあり、フランチャイズを含めた約13万人のほか、退職者にも未払い分を支払うと発表した。同社は「現段階で総額は把握していない」としているが、遡(さかのぼ)って支払い義務のある一昨年8月以降の差額分は数億−数十億円にのぼる可能性もある。
 同社はアルバイトの賃金や社員の手当を30分単位で計算、30分未満を切り捨てていた。例えば午前7時31分−午後3時59分(約8時間半)の労働時間は、午前8時−午後3時半の7時間半と計算していた。
 今年五月下旬、兵庫県内で勤務する社員の手当について、労働基準監督署から「切り捨て分も支払う必要がある」と指摘され、過去の未払いが判明した。同社は制度是正のため、1日から1分単位の勤務時間管理システムを導入した。
 同社は今のところ、「通期の業績見通しへの影響はわからない」としている。
(平成17年8月2日付産経新聞朝刊から)

この記事の「例えば」というのが会社の指示で意図的に行われてきたとすればかなり悪質ですが、これはたぶん本当の「例えば」でしょう。労働時間計算については、まあこれでもいいのかな、という感じです。


もっとも、現実には、ほとんどの企業は15分(単位が多いのではないかと思いますが)とか30分単位(ホワイトカラー中心の企業だとこちらが多いか)とかで時間外手当を計算していると思います。これは、切り捨て計算で残業代を節約しようというよりは、基本的には分単位で計算するのは煩雑で手間隙がかかるからだということがあり、それに加えて、必ずしもタイムカードなどの記録のとおり全てを労働しているわけではなく、仕事にかかる前に同僚と雑談したり、終わってから喫煙したりしているといった時間もあるなど、分単位のような厳密な管理をするのはあまり意味がないという事情もあるでしょう。
そう考えると、このIT革命の時代に、マクドナルドほどの会社なら分単位で計算するシステムをつくること自体はそれほど難しいことではないでしょうし、むしろ、入れ替わりが激しい(だろうと思うのですが)アルバイトが多数出入りするなかで、それなりに顧客情報などの個人情報もある(あまりないのか?)だろうことを考えれば、従業員の出入りを分単位でおさえられることのメリットもあるでしょうから、手間隙を惜しんで簡略な計算をする必要性はあまり高くないだろうと思われます。
また、仕事の性質からみても、今回の件で圧倒的大多数を占めるのはアルバイトでしょうが、マクドナルドのアルバイトの仕事であれば、まずまずタイムカード(なりICカードなりなんなり)どおりの時間を働いたと考えていいでしょうから、分単位の計算でも悪くはなさそうです。もちろん、タイムカードどおりとなれば、なるべく時間が長くなるように知恵を使う人もいるかもしれませんが、それも周囲の目を考えればあまり露骨にはできないでしょうから、職場管理においてもそれほど大きな問題はないかもしれません。
コストという面でも、時間が長くなる分一時的にはコストアップになるでしょうが、これは今後は段階的に単価(時給)で調整していけばいいだけの話ですから、マクドナルドとしても将来的にはそれほど気にはしていないでしょう。むしろ、記事にもあるように、今期の業績には案外影響するかもしれません。
以前、北海道のスーパーが牛肉の産地を虚偽表示した際、実物やレシートなどがなくても払い戻しに応じたところ、払い戻しを求める人が殺到し、現実の販売額をはるかに上回る払い戻しを強いられたことがありましたが、今回も似たようなことが起こる可能性は否定できません。そうなった場合、いかに2年間(賃金債権の消滅時効ということか)とはいえ、マクドナルドでアルバイトをした経験のある人は膨大な人数でしょうから、報道以上の額になる可能性もあります。マクドナルドは国内に4千店弱あり、社員とアルバイトで10万人を超えるそうです。ここからは推測ですが、平均週3回出勤するとして年間約150日、1,500万人日になり、最大限請求すれば(まさに記事が「例えば」と書いているとおり)一回の出勤あたり58分やれるわけですから、時給700円(くらいのものか?)で計算すると(残業代は2割5分増しですから)総額で約130億円になります。これはけっこうな数字です。逆に、この間1年間、週3日働いたアルバイトの人は、13万円のボーナスを得られるチャンスというわけです。さてどうなりますことやら。
それはそれとして、本社などで企画業務や一定程度以上の専門的業務などに従事する社員の人までタイムカードどおりとされたとしたら、その中には時間をうるさく言われずに働きたい人もかなりいるでしょうから、こちらはちょっとお気の毒という感じです。