「給料以上に仕事をしている」

先週後半になりますが、NHK職員の不祥事が報道されていました。

 NHKは19日、番組制作局映像デザイン部の男性職員(39)がコンピューターグラフィックス(CG)制作費を架空請求し、うち約470万円を着服していたと発表した。…
 NHKによると、男性職員はスタジオセットを新しくする際に、セットの見え方などを確かめるCGを自ら制作。一方で、外部に制作を委託したように装い2004年3-10月に4回にわたり、NHK子会社を通じて制作費を男性職員の親族名義の銀行口座に振り込ませていた。
 男性職員は内部調査に対し、「給料以上に仕事をしているとの思いが募り、不正をしてしまった」と説明。着服金の一部は飲食費に充てたが、全額を弁済したという。
(平成17年5月20日日本経済新聞朝刊から)

「給料以上に仕事をしているとの思いが募り、不正をしてしまった」ねぇ・・・まあ、実感だったのでしょうが、いささか手前勝手なような。


外注制作費の高さと、自分の給料とを比較した素朴な実感なのでしょうが、それが不満なら独立して外注業者になればいいだけの話です。独立すれば制作費はいい金額を取れるでしょうが、それは仕事があればの話で、仕事が来るという保証はどこにもありません。仕事がなければ収入はゼロです。NHKに勤務していれば毎月の賃金は保証されますし、NHK内部で昇進していくという可能性もあります。外注制作費と賃金の格差はこうした要因も反映されているわけで、39歳にもなってこういうことがわからないというのはいささか情けないものがあります。
もっとも、39歳で「CGを自ら制作」というところから推測すると、「NHK内部で昇進」という可能性はあまり高くない人なのかもしれません。先行きの希望が乏しくなると、「給料以上に仕事をしている」という思いが募る、というのは情においてはわからなくもありませんが・・・。
ところで、この人は39歳ですが、若い人のなかには、このように表面的な金額だけを比較して「給料以上に仕事をしている」と感じている人が多いのではないでしょうか。そういう人が「成果主義」を支持するのは当然の反応で、「若い人ほど成果主義を支持している」という調査結果は、こうした表面的理解の結果に過ぎない可能性もありそうです。