名物市長またも弾ける

hamachan先生も取り上げておられますが、6月29日のエントリでも取り上げた鹿児島県阿久根市の名物市長、竹原信一氏がまたしても暴走しているようです。

 鹿児島県阿久根市竹原信一市長は31日、市役所内に掲示していた職員人件費の張り紙をはがしたとして、40歳代の男性職員を懲戒免職にした。
 竹原市長は「行財政改革を支持する市民に対する挑戦的な行為」と説明しているが、職員は「処分は重すぎる」として市公平委員会に異議を申し立てる方針。識者からも「免職にする事案とは言えない」との指摘が出ている。
 市長はさらに、監督不行き届きとして、総務課長を文書訓告、市民環境課長と総務課長補佐を口頭注意処分にした。
 処分後、竹原市長は「人件費削減を公約としており、張り紙は公約実現の手段の一つとして行った。職員から提出された顛末(てんまつ)書にも反省は見られない」と説明。「市役所の指揮、命令機能の危機的状況を明らかにした。事件の重大性にかんがみ、処分することにした」と述べた。
 一方、男性職員はこれまでの取材に「張り紙があると職員が萎縮し、ミスが増える。これでは市民のためにもならないと思い、はがした。免職は納得できない。まずは公平委員会に申し立て、処分の不当性を訴えたい」と話していた。

 昨年8月の市長選で初当選した竹原市長は、自身のブログなどで職員の厚遇批判を展開。今年2月、市のホームページで268人の全職員の給与について、1円単位での公開に踏み切った。市議会との対立が深まった4月16日、「平成19年度の人件費総額16817万円(正規職員26名分)」など、市役所の各部署の出入り口に、2007年度の所属職員の総人件費などを記した紙を張り出した。
 しかし、翌17日、市議会が2度目の市長不信任案を可決し、竹原市長が失職した直後、すべての紙がはがされた。竹原市長が出直し市長選で再選後の6月上旬、男性職員が「自分がやった」と名乗り出た。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090731-OYT1T00559.htm

なるほど、「市役所の指揮、命令機能の危機的状況」ときたもんだ(笑)。選挙で選ばれた市長の言うことをきかないとは何事だ、ということでしょうかね。それにしても、解雇はいけませんぜ解雇は(しかも懲戒免職は)。言うことをきかないとクビだぞ、だから言うことをきけ、という幼稚なアタマでは、公務員組織を相手に回してわたりあうのはいかにも荷が重いでしょうねぇ。
そもそも、貼り紙をはがした人間がノコノコ名乗り出てきた時点で、本当にあるかないかは別としても、一応はなにかワナがあるのではないかと考えるのがリスク管理というものでしょう。それを単純に挑発に乗って免職してしまったのでは、まさに相手の思うツボ、さあ訴訟だ、免職撤回だ、責任問題だ…となることは目に見えていると思うのですが、よほど目の見えない市長なのでしょう。
まあ、目が見えることよりも熱意や行動力を支持されて当選したのでしょうから、だったら目の見えるしっかりしたブレーンをつければいいと思うのですが、なにしろ市職員の人件費の高さを槍玉にあげているだけに、自分のブレーンを公費で雇うわけにもいかないのでしょうか。
それはそれとして、上記の読売の記事にはくだんの貼り紙の写真も掲載されているのですが、これは確かに強烈です。開所時間を通じて「こいつら、こんなに貰ってるのかよ」という市民の白い目にさらされながら働かなければいけないというのは、たしかにおよそ良好な職場環境とはいえません。やるにしても、きちんと職場に趣旨を説明し、十分に話し合った上で実施すべきものでしょう。
もっとも、市職員の「張り紙があると職員が萎縮し、ミスが増える」という言い分も、要するに自分たちの給与水準の適正さを市民に説明できないということでしょうから語るに落ちている感はありますが、これには同情の余地もなくはありません。市民が市役所の仕事をすべて承知しているわけではありませんし、自分に関係のない仕事はどうしても軽視しがちになるのが自然だからです(いっぽうで役所は役所で自分たちの仕事を過大評価するでしょうが)。
市民から職員の給与について疑問があれば(なくてもですが)、役所がどんな仕事をどれだけどのようにやっているのか、それに対して職員の給与はどうなっているのかを説明する、まあ現実には仕事との関係だけで説明するのは難しいでしょうから地場の賃金水準とか他の類似の市の水準とかも参照しながらでしょうが、とにかく説明するのが市長の仕事というものでしょう。それについて市長が高いとか安いとか考えているのであればそれを表明すればいいわけですし、具体的な対応を議会に提案すればいいわけでしょう。阿久根市の場合は議会が抵抗するので竹原氏はそれに苛立っているのでしょうが、だからといって反対すれば免職だ、みたいな短絡的な発想では物事は進まないのが現実というものでもあるわけで。
ただ、役人叩きで民意をひきつけるという面では、竹原氏はなかなかのパフォーマンスを上げているともいえそうで、これは同様のことを考えているとおぼしき民主党には大いに参考になるかもしれません。いやこれは冗談ですが。