言わされてるだけでしょ

以前のエントリで、ニッポン放送株をめぐる争いで、同社の社員会が現経営陣支持を表明したことを紹介しましたが、今朝の毎日新聞のインタビュー記事によれば、対抗するライブドアの堀江氏は、これについて意に介さないとの見解を示したそうです。その言い方がシンプルにしてふるっています。

 ニッポン放送の社員がライブドアの経営参画に反対する声明を出したことについては「言わされてるだけでしょ」と述べた。

堀江社長 総会で委任状含め過半数達成に自信 本紙と会見
平成17年3月8日付毎日新聞朝刊

うーん。率直な物言いといえばいえますが・・・この発言、いろいろなことを考えさせてくれるなかなか面白い発言ですね。
 
こんなとき、たとえば人事管理のコンサルタントあたりに相談すれば、「経営権を把握したら、きちんと私のビジョンを説明して、社員と対話するつもりだ。きっと共感を得て、一緒に働こうと思ってもらえると信じている」なんて「模範回答」をアドバイスされるんじゃないかと思いますし、そう言っておいてなんの問題もないと思うのですが、そう言わないところがなかなかのものです。
「稼ぐが勝ち」という人ですから、自分が乗り込んでしまえば、今度は社員に堀江氏自身を「支持します」と言わせることができる、と本気で思っているのかもしれません。であれば、この物言いもわかります。しかし、ライブドアにもすでに1,000人くらい従業員がいるそうですが、この1,000人もライブドアの経営者=堀江氏へのビジョンや共感ではなく、カネのために働いていると本当に割り切っているのでしょうか?私はそういう経営者のもとでは働きたくありませんが、それはそれでその信念の強固さは凄いとは思いますが・・・。
まあ、旧来の体制には強烈に反発する堀江氏のことですから、ニッポン放送(やフジテレビ)の古臭い老人経営者を社員が支持しているわけはない、自分のような経営者こそが社員の支持を集めるのだ、と信じているということかもしれませんが。
それにしても、これは堀江氏の企業別労組や社員会といったものへの認識が現れたものだとしたら面白いですね。堀江氏に限らず、彼くらいの世代の人は、ニッポン放送やフジテレビの社員会、労組といったものは要するに経営者のいいなりの「御用組合」であって、社員はいやいや入ってるだけ、と思っている人が多いのではないでしょうか。堀江氏自身はそうした会社勤めの経験はないのだろうと思いますが、おそらく周囲には大企業からの転職組が相当いるでしょうし、そういう人はたぶん、転職しない人以上に「御用組合だ」という不満を持っているでしょう。ひょっとしたら彼らは、事実言わされているのだから、「言わされてるだけでしょ、わかってるよ」と言うのがいちばん社員の共感を呼ぶはずだ、と思っているのもしれません。