ホリエモン

徳島にこもっている間に堀江貴文氏がまたお騒がせだったようです。まずは高校生ユニオンに対するこのツイートです。まあ承知の上で悪役として振る舞っているのでしょうからネタにマジレスという感はあるのですが。

頭おかしいねこいつら。 RT @kuma1977: 若いんだから他のことに時間つかえよ。:高校生だけの労組結成(時事通信http://t.co/EgMRthTNBl

堀江貴文(Takafumi Horie) (@takapon_jp) 2015, 8月 27

http://news.livedoor.com/article/detail/10520437/から転載

上記転載元はライブドアニュースであります。さて転載元情報によればことのいきさつは「いわゆる「ライブドア事件」において、証券取引法違反で逮捕された熊谷史人氏が…自身のTwitterアカウントで「若いんだから他のことに時間つかえよ」と批判した。/すると、堀江氏がこれに同調する形で「頭おかしいねこいつら」と、辛らつな一言を添えたリツイートを投稿した。」ということだそうです。
そこで例によってはてなブックマークを見てみたところ(http://b.hatena.ne.jp/bookmarklist?sort=&url=http%3A%2F%2Fnews.livedoor.com%2Farticle%2Fdetail%2F10520437%2F)「これはひどい」が山のように(笑)。
ただまあ若干かみ合ってないという感はあり、たしかにまじめに労働運動に取り組もうという人に向かって「他のことに時間つかえよ」だの「頭おかしいね」だの言われるのは正直私も不愉快です。いっぽうで堀江氏も熊谷氏もアンチ・エスタブリッシュメントアウトサイダーという役回りなのでしょうから高校生に向かって学生の本分は勉学なんだからそんなことやってないでしっかり勉強して有名大学に進んで一流企業に就職しなさいということを言うつもりもないでしょう。つまり彼らの脳内にあるのはおそらく「若いのに労働組合なんて古臭いものやってどうすんの」という単細胞な発想であり、さらに時事の記事によれば背後にいるのは共産党系(だっけ?)の首都圏青年ユニオンだということですから、まあ堀江・熊谷両氏からみれば連合以上に古色蒼然、旧態依然たる存在に見えているのではないかと思われます(私が組合が旧態依然だと言っているわけではありませんので為念!)。それを率直に、露悪的に表現するとこうなるのでしょう。
まあそういう人たちなんでしょうから彼らが今さらどうこうなるという話でもなく、これを面白がって読む人というのもいるのでしょうから経済活動としてもありだとは思いますが、しかし影響力の大きい人なので困ったもんだとも思います。叩かれても平気な人にはかなわないよなあ。
なお「高校生だけの労組」に対する私個人の感想は、まあクラブ活動やボランティアサークルみたいなノリでおやりになるのは結構ではなかろうかという程度のものです。要するに高校生アルバイトが行きやすい相談窓口という意味ではそれなりに有意義であり無難でもあろうと思いますし、逆にいえば団体交渉とかを未成年にやらせるのはさすがに常識的にまずかろうとも思うわけです。あとはまあ文字どおり高校生「だけ」でやれるようなものでもないので、他の高校生の活動と同様にいい指導者がつくことが大事であり、しかし教員免許とか日本体育協会の公認指導者資格とかいったもののある世界でもないので、そこの質保障をどうするかは案外悩ましいところかもしれません。
さて話は変わりまして、ライブドアニュースのリンクをたどっていくとホリエモン氏は障害者雇用の関係でもお騒がせだったようです。広く流通したのはこのツイートのようですが…。

それは勝手にやってくれ。ただその多くは社会的にはプラスにはならないよ。したいならやり方を考えよう RT @tookik_jp: 障碍者の人達にも社会貢献したい人は多いですよ。その場を経済活動/労働に求める人も当然います、作業だろうがなんだろうが。

堀江貴文(Takafumi Horie) (@takapon_jp) 2015, 8月 20
http://news.livedoor.com/article/detail/10501801/から転載

これだけを見ると目を疑うような差別的な発言にみえますが、転載元記事によれば特段障害者差別の意図はないということで(もちろんライブドアニュースなので記事のバイアスを疑うことは可能)、結局のところは彼の持論である「資本は有能な人材に集中させたほうが効率的」といういつもの話をしているということのようです(これについては以前も格差関連で書いていますhttp://news.livedoor.com/article/detail/10434536/http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20111102#p1)。彼の場合はそれが「職業訓練やマッチングに必要なコストのほうが、就労して生み出す価値を上回る人は働かなくてよい」というところまで徹底しているから物議をかもすわけですね*1
もちろんこれに対しては労働は単なる経済活動ではなく、人間としての尊厳や社会関係といった意義があるという当然の反論がありますが、これに対して堀江氏は「社会にコストを負担してもらいながら働くのが尊厳ですか」という水掛け論を仕掛けてくるので始末が悪いわけです。実際、これまたはてブを見てみますと(http://b.hatena.ne.jp/bookmarklist?sort=&url=http%3A%2F%2Fnews.livedoor.com%2Farticle%2Fdetail%2F10501801%2F)、ここの水掛け論に対するいらだちを表明するコメントも目立ちます。正直、世界観が違いすぎて議論にならねえなと思わなくもない。
ただまあ私としてはやはりホリエモンワールドに同感はできないわけで、それは私が人間の成長力を信頼しているからだと思います。つまり、生産性の低い人がいるとして、働きもせず職業訓練も受けなければ生産性は低いままですが、職業訓練を受け、就労すれば、それを通じて生産性が高まる可能性が十分にあると信じるわけです。そもそも日本企業の典型的な人事管理がそれであって、最初は育成コストを投じて、仕事を通じて能力を向上させ、しかるのちにがっちり回収するという作戦ですね。もちろん若い時に生産性が低い人は長じてもあまり生産性が上がらないという傾向はあるかもしれません。いっぽうで、途中で「化ける」人材というのも一定割合いるのであり、そして往々にしてそういう「化けた」人材がイノベーションを起こしてきたわけです。
なおホリエモン氏はこれは障害者差別じゃないよというご見解のようですが(そして氏が本心でそう考えておられることを疑ってもいませんが)私は差別だと思います。障害者が健常者に較べて堀江氏のいうところの「働いたらその分社会が損する奴」になる可能性が高いことはまあ自明と思われ、障害者に対してreasonable accomodationを行うことは(健常者に対する)差別ではない、というのがまあ国際的に共有されている価値観です。堀江氏の言い分はreasonable accomodationの費用も含めて「社会が損する」というものでしょうから、これはさすがに障害者差別というべきものではないでしょうか。
しかし堀江氏のツイートはクズだの馬鹿だのいちいち下品ですね(私だって他人のことは言えないけど)。ツイッターのメディアとしての制約性を逆手に取って過激な表現を正当化しているのかなあ。

*1:ちなみに2009年にはすでにブログ上で「働くのが得意ではない人間に働かせるよりは、働くのが好きで新しい発明や事業を考えるのが大好きなワーカホリック人間にどんどん働かせたほうが効率が良い。そいつが納める税収で働かない人間を養えばよい。」と発言しています(http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10308808731.htmlhttp://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10309923304.htmlあたりをご参照)。