プロスポーツ選手のセカンド・キャリア

けさのNHK第1放送(ラジオです)で、「(社)日本野球振興会」が、プロ野球を引退した選手に求人情報を提供した、という話題が放送されていました。日本野球振興会とは何者だ、と思って調べてみると、プロ野球選手OBの集まりで、おもに少年野球の指導などを通じて普及と野球技術の向上をはかる団体のようです。例の「マスターズリーグ」もこの団体の協力で開催されているらしい。
プロスポーツ選手にはどうしても年齢的な限界があるでしょうし、現役を退いた後の人生が長いわけですから、引退後のセカンド・キャリアは大きな問題のはずです。引退後の生活に失敗する例も多いと聞きます・・・そういえば、まさに今日、かつてロッテオリオンズで活躍した小川博投手が強盗殺人の容疑で逮捕されたというニュースも流れていました。※私は、1988年(だったか)に、近鉄が最後の対ロッテ戦ダブルヘッダーを連勝すれば優勝、という局面で、その第1試合に先発した小川投手を記憶しています・・・
第二のキャリアの選択肢としてまず思いつくのが監督やコーチなどの指導者、あるいは解説者ですが、これはさすがに一握りでしょう。球団や親会社が職員として雇うケースも多いようですが、これも限界はあると思われます。
となると、どこかに再就職するか、あるいは自営をはじめるかになりますが、自営というのはけっこう多いようです。プロ野球選手の場合は、だいたい入団時にかなりまとまった金額の「契約金」を受け取るわけですが、これはある関係者の言によれば「退職金の前払い」なのだそうで、現役時代は契約金を適当な形で貯蓄、投資しておき、引退後にそれを元手に開業する(スポーツ用品店や飲食店が多いらしい)、というケースが多いのだとか。
いっぽう、必ずしも開業に十分なだけの契約金を受け取る選手ばかりではありませんし、開業を望まない選手もいるでしょうから、そういう人は再就職を探すことになります。今回の日本野球振興会の取り組みは、その再就職に関する求人情報の提供、ということでしょう。今回の求人情報は、スポーツ用品メーカーの営業マン、といった仕事が多いそうですが、それならプロ選手としての専門性や人脈が生かせそうです。OB会が互助的に取り組む事業として非常に有益といえましょう。
とはいえ、やはり野球選手として再就職することができれば最も望ましいのではないでしょうか。プロでは限界でも、社会人野球ならまだまだ十分やれる、という人は多いと思います。プロ選手からいきなりサラリーマンというのはギャップも大きいでしょうから、野球をやりながら仕事もして、徐々に仕事に慣れ、能力を身につけて、引退したらサラリーマンに専念する、といった漸進的な転換プログラムが有効ではないかと思います。企業としても、比較的コストのかからない補強になるのではないでしょうか。いま、元プロ野球選手が社会人野球でプレイするのには非常に厳しい制約がありますが、もっとおおらかに移動を認めてもいいのではないかと思います。
逆にいえば、とくに今回のように新球団が発足するときなどはとくに、社会人からプロへのレンタル移籍の制度があればいいのではないかと思います。新球団としては、実力はあるが年齢的にプロ入りは難しいという社会人選手が、2〜3年だけでもレンタルで来てくれればかなり助かるでしょうし、それなら数年間行ってみたいという選手もいると思います。一般論としても、プロを引退したら元の会社に戻れるということになれば、選手はリスクが低下しますし、プロ球団も高額な契約金が不要になるわけで、双方にメリットがあるような気がします。
ちなみに、問題はサッカーのJリーグでも同じことで、むしろ契約金や年俸がプロ野球よりかなり見劣る分だけ深刻かもしれません。こちらは、先んじて事務局内に「キャリアサポートセンター」を設立し、求人の開拓・募集、再就職の斡旋などに取り組んでいるそうです。