日本労働研究雑誌1月号

 (独)労働政策研究・研修機構様から、『日本労働研究雑誌』1月号(通巻750号)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。今年のカラーは萌黄色というのでしょうか。

 本号の特集は「シングルの生活とキャリア」で、未婚化が進み、独身者・単身者の比率が上昇している今日にあって時宜を得たテーマといえそうです。多様なシングルについて様々な観点から分析が加えられており、勉強させていただきたいと思います。
 また、董艶麗・茨木瞬「日本における最低賃金の引き上げが雇用に与える影響ーメタ分析による評価」は「最賃引き上げは雇用を減らすか」という長年の論点について、昨今のわが国における積極的な最賃引き上げの影響を調べた40の論文のメタアナリシスで評価したもので、「改定された最低賃金を上回る賃金で働いていた労働者の雇用が失われ、賃金水準の低いパート・アルバイトの雇用が増えた」可能性が示唆されるという興味深い分析が示されていて注目されます。実はかなり以前(2007年だから15年前くらいか)に最賃引き上げはこれに近い結果をもたらすのではないかと書いておりましたので以下ご紹介させていただきます。

…もちろん、最低賃金を引き上げれば低所得の人の所得が増えるわけですから、その部分は格差是正に寄与するでしょう。ただ、その原資をどこから持ってくるのか、ということを考えると、連合が意図している(?のだと思うのですが)ように資本家への分配が減るとか、経営者や高賃金の管理職の所得が下がるとかいうことが起こりそうな気がしません。多くの経営者や管理職が働きに見合わない高い所得を不当に得ていると考える人もいるのでしょうが、現実には日本の経営者の報酬は諸外国に較べればいたって控えめなものですし、能力や貢献度が低くても年功的に高い賃金を受けている人は、このところの成果主義騒ぎなどの間にかなり減少しているはずです。多くの企業は、企業の成長につながるような、能力や貢献度の高い人の賃金を抑え込んで意欲の減退を招くことは避けたいと考えるのではないでしょうか。
となると、最賃引き上げの原資をどこから持ってくるかというと、民主党は底上げ路線を否定していますから総原資が拡大するというのはナシとして、起こりそうなのは次の2つです。

1.賃金上昇分を雇用減で吸収する。これは失業率の上昇につながります。
2.比較的賃金の高くない層の賃金水準を抑制する。単純にいえば、時給700円の求人が1000円に上がるいっぽうでこれまで1300円だった求人が1000円に下がる、といった調整が外部労働市場全体で起きそうです。

 この場合、最低賃金引き上げの格差是正効果は実はあまり大きくない、ということになるのではないでしょうか。

roumuya.hatenablog.com
 たいして近くもないかな(笑)。