大竹文雄・川口大司・鶴光太郎編著『最低賃金改革』

編著者の皆様から、大竹文雄川口大司・鶴光太郎編著『最低賃金改革−日本の働き方をいかに変えるか』をご恵投いただきました。ありがとうございます。鶴先生プロデュースのこのシリーズも4冊めとなりましたでしょうか。

今回は最低賃金にフォーカスしてさまざまな分析が集められていますが、結論はかなり明確で、「はじめに」に記載されているように

(1)最低賃金の影響を受けやすい労働者(10代若年)に限れば、最低賃金上昇の雇用への負の効果は明確である、
(2)最低賃金の企業収益への負の効果も明確である、
(3)最低賃金引き上げは比較的裕福な世帯主以外の労働者にも恩恵があるという意味で貧困対策としては漏れがある、

ということが分かったとのことです。そのうえで、「代替策として低賃金労働者の賃金を高め、生活を保障する政策を早急に検討せねばならない」と述べられています。私は以前から生産性の向上を通じて賃金の上昇をはかるとともに、それでもなお低賃金とならざるを得ない労働者には端的に賃金とは別途の福祉的給付を行って生活を保障するのが適当ではないかと考えており、このブログでもたびたび書いていますが、著者も述べるように「いくつかの対貧困政策と比較し、その効果と政治的実現可能性をセットで考えることが重要」なのだろうと思います。