脇坂明『労働経済学入門』

「歌う労働経済学者」脇坂明先生から、ご著書『労働経済学入門』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

労働経済学入門-新しい働き方の実現を目指して

労働経済学入門-新しい働き方の実現を目指して

副題に「新しい働き方の実現を目指して」とあり、オビの惹句も「現代の働き方を反映した新しい労働経済学のテキスト」となっているように、働き方や労働力の多様化を主眼においた本です。目次をみますと、2部構成になっています。

第I部 新しい働き方の経済学
 第1章 ワーク・ライフ・バランスの経済学
 第2章 若者の働き方の経済学
 第3章 女性の仕事の経済学
 第4章 高齢者の働き方の経済学
 第5章 多様な働き方の経済学
 第6章 ワークシェアリングの経済学

第II部 労働経済学の基礎理論
 第7章 内部労働市場の経済学
 第8章 賃金はなぜ右上がりになるのか
 第9章 昇進の経済学
 第10章 差別の経済理論
 第11章 労働供給と労働時間
 第12章 失業のタイプと解消策
 第13章 労働組合の経済学

やはりオビによれは第I部は「トピック別に学びたい人へ」、第II部は「理論をきちんと学びたい人へ」ということのようです。見てみると、第I部は経済学の解説というよりはそれぞれのトピックを経済学的な見地から解説したという趣で、経済学の考え方で社会現象を考察するとどうなるのかを示し、それがどのように有益かを考えることができるように書かれています。雑誌の連載がもとになっているとのことで、労働問題に関心のある人には面白い読み物になっていると思います。
第II部にはそれなりに数式や無差別曲線、需要曲線/供給曲線なども出てきますし、従来の労働経済学の分析の枠組みにしたがった章立てになっていて、学部向けの教科書という感じになっています。著者「はじめに」にあるように、読み手にあわせていろいろな使い方のできる本だと思います。
第I部のトピックスは「ワーク・ライフ・バランス」「女性」「ワークシェアリング」と脇坂先生の得意分野が並んでいるのを見てもわかるとおり、こういう教科書をつくるならこの先生でしょうという本で、このあたり編集者の目の付けどころもよかったというところでしょうか。広く使われてほしい教科書であり広く読まれてほしい本という印象を受けました。
それにしても今回も「いつまでも燃える紅葉の茜」をご堪能ですか先生!渋い!!