無職の移住お断り

きのうの日経夕刊で興味深い記事を発見したので備忘的に。ファールスは2006年のW杯期間に名古屋グランパスがミニキャンプをやった町ですね(つまらんことを覚えているものだと思われるかもしれませんが仕事柄)。

 無職や資産のない外国人の移住はお断り――。オランダ南部の小都市ファールスでこんな政策を9月から導入する方針を決定、欧州連合(EU)内で論議を呼んでいる。EUの「ヒトの移動の自由」という原則に反し、外国人排斥の新たな動きとなりかねないため。EUの執行機関の欧州委員会もオランダ政府と協議を始めた。
 ファールスはベルギーとドイツの国境近くの人口1万人弱の小都市。市関係者は「ポーランド人とルーマニア人が福祉目当てで移住」と言及した。名指しされたEU議長国のポーランド政府は「ヒトの移動の自由という欧州の仕組みの崩壊につながる」と猛反発している。
平成23年8月1日付日本経済新聞夕刊から)

この記事は、働くならいいけど福祉目的の移住はダメということでしょうか。
オランダは90年代後半以降にワークフェア政策を推進し、救貧福祉と就労促進がセットにされているはずですが、一方で障害給付の受給者も多いという話もあり、就労せずに福祉だけを受け続ける人も一定数いるのでしょう。自国民ならいいけれど外国人はダメというのは、あまりいい話とは思えませんが、しかしそういうことを言う人もいるだろうなとも思います。どうしても外国人の社会的な負担は地域や自治体が負う部分が大きくなるので、人口1万人弱の町では人数が増えてくると大きな問題になりやすいのかもしれません。
さて、この記事がちょっと気になったのはわが国でも求職者支援制度が導入されたからです。
生活保護制度の適用は国民に限られており、現実には多数の外国人にも事実上支給が行われていますが、しかし困るほど増えれば支給をやめることは可能です(もちろん大騒ぎが起こるでしょうが)。失業給付などは一定期間雇用保険の被保険者であることを要しますから、入国後無職の人には給付されません。したがって「働かずに福祉だけ受ける」ことを目的とした移住は難しい制度になっているわけです。
ところが、求職者支援制度は雇用保険の被保険者であることを要しない(まあ新卒無業者などの支援を意図しているのだから当然ですが)ので、外国人が入国後就労することなく給付を受けられる可能性はあるのではないかと。別にそれが悪いと言いたいわけではありませんが。
まあわが国の場合は域内移動自由のEUとは異なり入管による制限がありますからかなり事情は異なりますが、まあありえない話ではないなということで備忘的に。