社会保障改革に関する集中検討会議の改革案

消費税増税の話は月末に既報されていることもあり、政局の見苦しいゴタゴタの前にすっかり影が薄くなっていますが、きのう開催された「社会保障改革に関する集中検討会議」に社会保障改革案が提示されました。内閣官房のウェブサイトに掲載されています。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/syutyukento/dai10/siryou1.pdf
さてそれによると優先的に取り組む事項として以下の4点があげられています。

  1. 子ども・子育て支援、若者雇用対策
  2. 医療・介護等のサービス改革
  3. 年金改革
  4. 制度横断的課題としての「貧困・格差対策(重層的セーフティネット)」「低所得者対策」

そして、具体的改革を進める個別分野として次の5分野が示されました。

  1. 子ども・子育て
  2. 医療・介護等
  3. 年金
  4. 就労促進
  5. 1.〜4.以外の充実、重点化・効率化

例によって一部機種依存文字(ryで、本文のあとに「別紙1」ということでこの5分野別の「社会保障改革の具体策、工程及び費用試算」が一覧表にされて付けられています。「子ども・子育て」が1ページ、「医療・介護等」が2ページ、「年金」が2ページあって、あれ?「就労促進」は?
と思ったら、次のページの上4分の1くらいにつつましく「就労促進」があって、その3倍くらいの分量の「1.〜4.以外」とセットで1ページにされておりました。うーむ。ということで内容もいたってコンパクトです。

○全員参加型社会の実現☆:○就労促進策の継続的推進
・ジョブ・カードの活用等による若者の安定的雇用の確保
・女性の就業率のM字カーブの解消
・超高齢社会に適合した雇用法制の検討など年齢にかかわりなく働き続けることができる社会づくり
・福祉から就労への移行等による障害者の雇用促進
○ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現
非正規労働者の公正な待遇確保に横断的に取り組むための総合的ビジョンの策定:○総合的ビジョン:2011年に策定
・有期契約労働者の雇用の安定や処遇の改善に向けた法制度の整備の検討:○法制度整備:2011年度労働政策審議会で結論、所要の見直し措置
長時間労働抑制やメンタルヘルス対策による労働者の健康・安全の確保:○労働安全衛生法改正法案について、早期国会提出に向け検討
雇用保険・求職者支援制度の財源の検討:○雇用保険法、求職者支援法の規定を踏まえ検討

となっておりまして途中☆印のところからは矢印が引き出されてその先に雇用戦略対話の目標値がいくつか書かれているのですが省略しました。求職者支援制度については就労促進ではなくこの後の「1.〜4.以外」に記載されていますね。この後、「格差・貧困対策」に該当するものをあらためて抜き出して1ページにまとめたものがついて、これで「別紙1」は終わりです。
さて内容以上に不審なのが他のページは2015年と2025年の費用試算が付いているのにこのページだけはつけられていないことで、さてはこれ全部雇用保険のカネと地方のカネと民間のカネでやりなさいということですね。いやさすがにそんなことはないのだろうとは思うのですが、同時に提出されている「片山大臣提出資料」(http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/syutyukento/dai10/katayama.pdf)をみると、この改革案を「自治体の意見を聴く機会がこれまでごくわずかしかない。しかも、その意見すらほとんど反映されていない」としてケチョンケチョンにこき下ろしているわけで、ひょっとしたらひょっとするのかもしれません。いやまさかねえ。
さて内容のほうは社会保障改革なので全員参加型社会が出てくるのは順当な成り行きでしょうが、若者の安定的雇用の確保の代表的施策がジョブカードなんですかとか、別に何歳以上は働いちゃいけないという法律があるわけでもなし今でもすでに「年齢にかかわりなく働き続けることができる社会」になってますよねとかいうような話はこれまでも何度か書きました。障害者雇用についてはいつぞやの障害者自立支援法はさんざんな不評だったわけですが、それでも社会保障改革だからやはり「福祉から就労への移行」となるわけですね。「等」となっているからいいのかな。まあ私も「福祉から就労への移行」は大事な原則だと思いますが(もちろんすべてそれでやれというわけではない)。
ディーセントワークも大切なキーワードなので織り込むのはけっこうだろうと思います。有期と安衛は記載のとおり既定路線ですが、「非正規労働者の公正な待遇確保に横断的に取り組むための総合的ビジョンの策定」というのはなんなんでしょうね。横断的、というのはなにを横断するのかわかりませんが、まあ有期、パート、派遣といった諸形態を横断するのか、あるいは正規雇用との横断なのか…。いずれにしても相変わらず公正な待遇確保とか言っていてすでにダメっぽいかなあという感じです。総合的ビジョンというならなおさら、キャリアを前面に出してくれないと。まあ社会保障改革なのでどうしても関心事項が金目の話に行きやすいのでしょうが。
ちなみに「子ども・子育て」については「子ども・子育て新システムの制度実施に伴う保育等の量的拡充、幼保一体化などの機能強化」がメインに打ち出されていて非常にいい感じです。これもキャリアが大きな問題なわけで、企業に対して休ませろとか休んでる間もカネ払えとか休んだ後は同じ仕事に戻せとかいうよりは(いや労使が自主的にこれらに取り組むことはもちろんたいへんいいことだと思いますが)、子どもを預けられるようにすることでなるべく休まずにキャリアを継続できるようにすることのほうがどちらかといえば重要なのではないかと思います(もちろん人によりいろいろな選択があろうと思います)。