介護職員処遇改善交付金、申請進まず

毎日jpから。介護職員処遇改善交付金の申請率が現時点で48%となっているそうです。

介護職員処遇改善交付金:申請率48%どまり

 介護職員の月給を1万5000円上げるため都道府県が事業者から申請を受け付ける介護職員処遇改善交付金について、長妻昭厚生労働相は14日、申請率が約48%にとどまっていることを明らかにした。長妻氏は「交付金は継続する。100%の事業所が活用してほしい」と呼びかけた。

 交付金は麻生政権が追加経済対策として実施を決めた。長妻氏は▽新政権になり交付金が執行停止になるのではとの懸念がある▽交付金の期限(11年度末)の後の交付金の取り扱いが不明確−−などで事業者が申請をためらっていると推測。予定通り約4000億円を満額交付し、12年度以降も4万円増を目指して処遇改善に取り組む。

毎日新聞 2009年10月15日 東京朝刊

http://mainichi.jp/life/health/news/20091015ddm041040086000c.html

なるほど、この制度としては48%は低調かもしれません。ただ、「▽新政権になり交付金が執行停止になるのではとの懸念がある▽交付金の期限(11年度末)の後の交付金の取り扱いが不明確−−などで事業者が申請をためらっている」という推測が当たっているかどうかは微妙な感じもあります。
たしかに、この交付金が「介護職員の月給を1万5000円上げるため」だけのものであれば、利用が低調になるのも当然で、48%はむしろ低調の範囲に入るでしょう。月給は下方硬直性が強く、一度上げてしまうと下げることは容易ではありません。2年半だけは交付金で面倒を見ますよと言われても、その後はどうしてくれるんだ、ということに当然なるわけで、であれば「交付金が中止になる、期限後の取り扱いが不明確」が低調な理由だという推測になるのももっともです。
しかし、実はこの交付金は、必ずしも月給を上げることだけに用途が限定されているわけではありません。交付金の支給要件は交付金の額(介護報酬総額をベースに決まる)を上回る賃金改善をすることであり、この「賃金改善」については「賃金改善の方法は、ベースアップ、定期昇給、手当、賞与、一時金等があるが、賃金が改善するのであれば問わない」という厚生労働省の見解が示されています。つまり、賞与、一時金といった、「あとをひかない」形での賃金改善も認められているわけです。交付金額を上回る、というのは1円でも上回っていれば「上回る」ことになるわけですから、交付金を受給してそれを一時金として介護職員に配ってしまえばいいわけです。そして、交付金が打ち切られたら当然この賞与もおしまい。これは月給を下げるのに較べたらはるかに抵抗感は小さいものと思われます。
ですから、厚労相が「交付金は継続する」と約束するのもいいでしょうが、まずは「賞与・一時金での支給も可」「交付金がなくなったらその分の賞与・一時金はなくしても可」ということを広く周知してみてはどうでしょうか(それとも、そういうのはダメという運用がされているのでしょうか)。まあ、政策の意図するところは月給の改善ではあるでしょうが、しかし介護職員にしてみれば賞与であってももらえないよりはもらえたほうがいいはずなので、少なくとも交付金の申請は増えるだろうと思います。
もっとも、この交付金については、介護職員だけに対象が限定されていて、その他の職員との不公平感が強いという現場の意見もあるのだとか。月15,000円ということは年間18万円、これだけ賞与の額が違ったらたしかに不公平だという不満も出てきそうです。それが全体として従業員の士気を下げるということだと、やはり申請に二の足を踏む事業者もいるでしょう。まあ、これは賞与がでたら介護職員がその他の職員に盛大におごる、という庶民的な解決方向もなくはなさそうですが、さすがにそれではうまくいかないことも多いか…というか、それではさらに政策の意図からはずれますか…。