民主党マニフェストの公務員叩き

民主党マニフェストが発表されたとニュースで報じられていましたので、さっそく民主党のウェブサイトで見てみました。
http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2009/index.html
全体的な感想としては、案の定というべきか、大衆迎合色の強いものになっているなあという感じです。
そう感じた主な理由はふたつあって、ひとつは、とにかく分配論が中心の政策になっているという点です。これがバラマキかどうかは見る人の見方によってさまざまでしょうが、子ども手当にしても農家の戸別所得補償にしても、あるいは高速道路の無料化にしても、家計への分配であるには違いないでしょう。そして、その財源は、これまた本当に成立するかどうかは別としても、「税金のムダづかい」をなくすのと、「埋蔵金」の流用でまかなうと言っているわけですから、要するにこれまで別の分野に分配していたものを家計に分配するというわけで、まことに大衆迎合的です。
もうひとつは、相も変らぬ官僚叩きに終始していることです。まあ、それが現時点ではいちばん国民受けがいいのでしょう。各論の最初が「ムダづかい」となっているのは「財源不明」批判への対抗上でしょうが、そのスローガンがいきなり「税金は、官僚と一部政治家のものではありません。国民の税金を、国民の手に取り戻します」ですからねぇ…orz
あるいは、「ムダづかいをなくすための政策」に「国家公務員の総人件費を2割削減します」というのがあるのですが、いったいどうやって2割も減らすのでしょうか?
これについては、後のほうの「政策各論」で具体論が述べられていて、こうなっています。「○地方分権推進に伴う地方移管、国家公務員の手当・退職金などの水準、定員の見直しなどにより、国家公務員の総人件費を2割削減する。/○公務員の労働基本権を回復し、民間と同様、労使交渉によって給与を決定する仕組みを作る。」いやはや、これはまたまことに味わい深い文章と申せましょうか。
で、とりあえず「地方分権推進に伴う地方移管」ですが、地方移管するということは当然ながら予算もあわせて移管するということでなければ話があわないような気がするのですが、違うのでしょうか?となると財源は増えませんし、予算は移管しないというのであれば、単に地方の税金を国が巻き上げるに過ぎません。普通、そういうのは「ムダづかいをなくす」とは言わないと思うのですが…。
それから、「公務員の労働基本権を回復し、民間と同様、労使交渉によって給与を決定する」というのは、民主党の支持母体である連合に大いに配慮したものなのでしょうが、この書き方からすれば当然「国家公務員の手当・退職金などの水準、定員の見直し」というのは、公務員の労働基本権やら労使交渉やらとは無関係にやるということになりますよね。これは、連合との間で「労働基本権は回復し、賃金交渉もできるようにするから、手当、退職金、定員の見直しには文句を言うな」という取り引きをしようということなのでしょうか?果たして、連合が呑める取り引きなのかどうか、なかなか注目されるところではありますが、連合としてもだったら賃金交渉で取るものはしっかり取るぞとなることは目に見えているわけで、それと2割削減との関係はどうなっているのかがまたよくわからないわけで…。
あと、「定員の見直し」というのは普通に考えて定員を減らすということなのでしょうが(マサカ定員を増やすのも見直しだ、などとは云わないでしょうね)、さてそれで多すぎる人はどうするのでしょうか?分限免職でしょうか?それこそ連合が黙っていないでしょうが…。
という調子で、とにかく官僚を叩いておけば国民が喜ぶだろう、官僚を叩けば財源は出てくるのだと言えば選挙民は納得するだろうという発想がありありなんですね。別に私が官僚を擁護するいわれはありませんし、官の弊害やムダというのももちろん多々あるだろうとは思います。公務員の賃金にしても、雇用が保障されていることを考えればもう少し低くてもよろしかろうとも思います(一方で、若手キャリアなどは明らかに低すぎるとも思いますが)。とはいえ、それにしても民主党のこれはかなり行き過ぎではないかと。
ついでにいえば、「ムダづかいをなくすための政策」には、「企業団体による献金・パーティー券購入を禁止します」というのがあって、その政策目的は「政治不信を解消する」となっています。まあ、そういう考え方もあるでしょう。これが「ムダづかいをなくすための政策」なのか?という感は禁じえないのですが、まあ一応は「企業献金→企業に便宜→ムダづかい」という理屈なのかなぁと考えられなくもありません(そうとは書いてありませんが)。ただ、それに続く「国会議員の世襲は禁止します」というのが「ムダづかいをなくすための政策」だ、というのはどうにも理解に苦しむものがあり…。政策目的は「多様な人材が政治家になれる環境を整備する」ことなんだそうですが、誰かこれが「ムダづかいをなくすための政策」になるという理屈を教えてもらえないものでしょうか?世襲の禁止そのものは、それはそれでひとつの考え方ですし、その長短をよく比較衡量して検討してほしいと思いますが…。
まあ、報道などによれば、外交問題についてはかなり現実路線にシフトしてきているようですし、消費税増税についても、以前ほど強硬な否定的姿勢ではなくなってきたようです。実際、現実に政権交代ということになれば、やらなければならないことはやらないわけにはいきませんし、できないことをやるわけにもいかなくなるわけですから。
各論については、明日のエントリで考えてみたいと思います。