リッチ層・貧乏層最新調査

職場の回覧で「週刊ダイヤモンド」8月30日号がまわってきました。遅いなあ(笑)。
さて、表紙に大書された特集名は「「下流」の子は下流?格差世襲」という今時はやりのセンセーショナルなもので、内容もなかなか刺激的なのですが、面白かったのは「リッチ層・貧乏層最新調査 1300人アンケートで見えた上流マインド・下流マインド」という調査結果です。「相続リッチ」「新興リッチ」と、世帯年収400万円以下の父親である「貧乏父さん」、世帯年収200万円以下のパート、アルバイト、派遣社員である「非正規ジュニア」の4つのカテゴリの意識を聞いています。
以下紹介していきましょう。まずは自己責任論からです。

Q.ワーキングプアは社会の犠牲者というより自己責任の面が強い

  そう思わない どちらともいえない そう思う
非正規ジュニア 37.4 52.8 9.8
貧乏父さん 23.8 58.1 18.1
相続リッチ 6.2 41.6 52.2
新興リッチ 13.3 38.0 48.7

Q.「努力は必ず報われる」と信じている

  そう思わない どちらともいえない そう思う
非正規ジュニア 27.6 45.7 26.8
貧乏父さん 16.3 49.0 34.6
相続リッチ 12.3 26.3 61.4
新興リッチ 10.7 30.7 58.7

正誤や善悪は別として、人間誰しも物事を自分の都合のいいように考えるものだ、というところでしょうか。そういえば、こうした傾向は佐藤俊樹『不平等社会日本』でも指摘されていたような。ちなみに、同じ記事によれば、相続+新興のリッチ層が「成功した秘訣」としてあげたものの最多はやはり「努力」の61.3%です。まあ、いかに条件的に恵まれたとしても、努力なくしては成功はなかった…といわれればそうかもしれませんが。もっとも、3番めに多いのは「運」の53.4%なので、それなりに努力以外の僥倖も認識されているのかもしれません。いずれにしても、再分配がより多く機能するためには、富裕層が「自分が富裕なのはさまざまな点で恵まれたから」という感謝の念を持つことが有効なはずで、そういう観点からはこの結果をどう評価すればいいのでしょうか。
次は家庭環境、学歴について。

Q.一流大学を出ることは成功するための重要な条件だと思う

  そう思わない どちらともいえない そう思う
非正規ジュニア 40.4 49.8 9.8
貧乏父さん 36.9 51.9 11.2
相続リッチ 18.6 54.0 27.4
新興リッチ 19.6 52.7 27.7

Q.家庭の経済格差、文化格差が、子どもの学力格差に影響すると思う

  そう思わない どちらともいえない そう思う
非正規ジュニア 12.2 43.3 44.5
貧乏父さん 9.8 38.7 51.5
相続リッチ 9.8 32.1 58.0
新興リッチ 11.5 27.7 60.8

これはどことなく逆ではないのかな、という印象もあります。富裕層にしてみれば、自分が富裕なのは環境や学歴に恵まれたからではない、と考えたいのではないかと思いますし、非富裕層にしてみれば、自分が富裕でないのは環境や学歴に恵まれなかったからだ、と思いたいのではないか…という考え方もできそうに思えるからです。ことによると、これらは「実際にそうだ」というよりは「こうあるべきだ」という意識の反映なのでしょうか?あるいは、自分自身ではなく、自分の子どもについて「こうなるだろう、だからそうする」という意志を反映しているのかもしれません。
ちなみに、関係する質問でこんな特徴的な結果も出ています。

Q.自分自身、親から十分な教育環境を与えられたと思う

  そう思わない どちらともいえない そう思う
非正規ジュニア 13.2 40.7 46.1
貧乏父さん 13.5 44.4 42.1
相続リッチ 7.0 24.6 68.4
新興リッチ 25.7 32.4 41.9

新興リッチの「そう思わない」が目立っていますが、これは新興リッチたちの「自分は恵まれなかったが克服した」という意識を反映したものなのでしょうか。新興リッチが非正規ジュニアや貧乏父さんと較べて教育環境に大きく劣るとも思えないのですが…。

最後に、まるで作り物のような結果をひとつご紹介。

Q.今の日本は、貧富の格差を逆転する「機会の平等」が機能していると思いますか

  機能している 今は機能しているが、徐々に機能しなくなる すでに機能していない
非正規ジュニア 6.3 16.9 76.8
貧乏父さん 5.2 17.9 76.9
相続リッチ 38.4 35.7 25.9
新興リッチ 33.3 26.7 40.0

「貧富の格差を逆転する「機会の平等」」という表現が適切かどうかというのはけっこう問題だと思いますが、それはそれとして。
まあ、ドライに言ってしまえば、いかに「機会均等」とは言っても、実際問題として結果平等だったり、あるいは自分が逆転したりするのでなければ「機会均等」とは感じられない、ということなのでしょう。
とはいえ、先々のチャンスが少なくなりつつある「貧乏父さん」はともかくとしても、まだ若年であろう「非正規ジュニア」までもが貧乏父さん並みの絶望感を持っているということは深刻に受け止める必要があるだろうと思います。政策的対応が求められる場面でしょう。