キャリア辞典「ハローワーク」

「キャリアデザインマガジン」第75号のために書いたエッセイです。今回は一回限りの軽いネタです。いやホント軽いネタだなぁ。


 公共職業安定所を「ハローワーク」と呼ぶようになったのは1990年のことである。従来「職安」あるいは「安定所」との略称が広く使われていたが、より明るく親しみやすい愛称を、ということで1989年に一般公募が行われた。その背景には、「職安=失業」というあまり明るいとはいえないイメージがあることや、語感の堅苦しさなどに加えて、当時はいわゆる「コーポレート・アイデンティティ」が流行し、多くの企業が通称社名を親しみやすいカタカナ名称に変更していたこともあるのだろう。言うまでもなく和製英語であり、公共職業安定所の英文表記は「Public Employment Security Office」とされている。
 厚生労働省のウェブサイトをみると、「全国ハローワーク等の所在案内」というページがあり、そこにはハローワークのほかハローワークプラザ、パートバンク、人材銀行、キャリア交流プラザ、マザーズハローワークマザーズサロン、若年者特別支援実施公共職業安定所(ヤングワークプラザ)、学生職業センター・学生職業相談室等、外国人雇用サービスセンター、地域職業相談室、高年齢者職業相談室と10個の「等」が列挙されている。その中の「学生職業センター・学生職業相談室等」においては、「ヤングハローワーク」という愛称が用いられている例も少なくない。職業安定法第8条は、公共職業安定所について「公共職業安定所は、職業紹介、職業指導、雇用保険その他この法律の目的を達成するために必要な業務を行い、無料で公共に奉仕する機関とする。」と規定しているが、どうやらハローワークと「等」の違いは雇用保険の業務が行われるかどうかにあるようだ。なお、公共職業安定所は、同法18条では求人又は求職の開拓等、第19条では公共職業訓練のあつせんを行うとされている。
 ちなみに第8条は「無料で」と定めているが、これは誰もが職業紹介サービスを利用できるよう無料の公共職業安定組織を維持し、全国に事務所を設置・運営するよう求めるILO第88号条約(職業安定組織の構成に関する条約)にも即している。昨今では民間の職業紹介サービスも発展し、求人・求職の手法も多様化しているが、これら民間職業紹介のビジネスに乗りにくい求人も多く、誰もが無料で職業紹介サービスを利用できるハローワークは、社会のセーフティネットとして依然として重要な役割を負っている。