言われてやることじゃない

すみません、もう一回だけ(笑)。特集の最後に印象的な一節がありました。

この長い職場変革の取り組みの途中で、経営者はふと、後戻りをしたい衝動に駆られるかもしれない。企業の収益にプラスになるといっても、実証研究はまだ少なく、反論の余地も少しは残されているからだ。
 しかし、日本IBMの内永ゆか子技術顧問はこう突き放す。「きちんと証明されてからやるのは経営ではない。ほぼ間違いないという段階で決断し、覚悟を決めて進める。それがトップの仕事でしょう」。
 市場だけでなく、人材獲得競争もグローバル化している。業界再編や業態変化も複雑に起こっており、経営に求められるスピードが高まっている。均質な経営陣で対処できるのか。こうした背景を理解すれば、後戻りなどできるはずがない。
 「うちは国内市場が相手で、グローバルで競争していない」
 「トヨタ自動車だって女性管理職が少ない」
 そんな反論は確かに成り立つ。ただ、内永氏は、最近はそうした発言の主に対して、あまり説得しないことにしている。
 「だってそれは人から言われて理解することですか? もう説得するのは疲れちゃった」

実は、元厚生労働省で今は資生堂の役員になっている岩田喜美枝氏が、私が以前「キャリアデザインマガジン」の編集のために取材した際、まったく同じことを言っておられました。

−−−−−経済界でも、ワーク・ライフ・バランスについての関心は高まっており、その必要性や経営に対する有用性への理解も進んでいますが、いっぽうで具体的にはなかなか進んでいないという実態もあります。どうして進まない
のでしょうか。

岩田 気付いていないのでしょう。私も業を煮やしまして、気付かないところはもう放っておけばいいのだ、と開き直って考えるようになりました。そういう企業、産業は衰退するのです。早く気付いて、早く手を打った会社が競争優位に立てるのだから、親切に言ってあげるのはもうやめようかと(笑)。これは冗談ですが、市場、マーケットが答を出すはずです。たくさんいいことがあるのに、気付かないというのは本当に残念ですね。
http://www.roumuya.net/itv/iwata2.html

実際、ダイバーシティもWLBも、それが企業の利益に結びつくかどうかは必ずしも確実な証拠があるわけでもなく、まだオカルトの可能性もあります。自社に効き目があるか(これが経営者には大事なわけですが)も確実ではないでしょう。しかし、周りがすべてやってしまって、やっぱり効果があった、ではこれからやるか、では遅いことも事実です。先行投資にはリスクがつきもの。思い切ってねばり強くやることが大切なのでしょう。となると、目先の利益を求める一部投資家がまたしても阻害要因になりますが…。