雇用三法案、成立微妙に

 最低賃金引き上げなど雇用ルール見直しに関する三法案の今国会での成立が微妙になってきた。政府・与党が厚生労働省関連の法案で優先する社会保険庁改革法案の審議入りが五月の大型連休明けにズレ込むためだ。社保庁改革法案は成立する公算だが、七月の参院選を控えて今国会の会期延長は難しい。格差是正の目玉となる雇用ルール見直しに、しわ寄せが行く格好となっている。
 衆院議院運営委員会は十八日の理事会で、与党が当初目指していた十九日の衆院本会議での社保庁改革法案の趣旨説明と質疑を見送ることを決めた。安倍晋三首相の出席が必要とされる重要法案のため、審議入りは首相が米国と中東訪問から帰国した後の五月八日以降になる見通しだ。
 首相は社保庁の「解体・分割」を掲げ、同法案の今国会成立にこだわりをみせる。ただ衆院厚生労働委員会の審議は立て込んでおり、すぐに社保庁改革法案を扱う状況にない。厚労省職員のミスで、成立目前だった雇用保険法改正案の施行日が修正に追い込まれた「不手際」も響いた。
 与党は世論の批判を浴びかねないイラク復興支援特別措置法改正案の審議入りを、二十二日投開票の参院補欠選挙の後にする方針。審議日程を巡る駆け引きもあり、社保庁改革法案の審議入りは大幅にズレ込んだ。
 政府は社保庁の相次ぐ不祥事を受け、提出済みの法案をいったん廃案にして新法案を提出し直した。それだけに今国会では確実に社保庁改革法案を処理する方針。このあおりで、後に控える雇用ルール三法案の成立が厳しくなった。
 首相は「景気回復の恩恵を働く人に広げたい」と強調、最低賃金や残業代の引き上げを含む雇用ルール三法案を格差是正策の目玉と位置付ける。与党は五月下旬にも衆院で審議入りする段取りを描くが、公明党幹部からは「継続審議とするのも一つの手だ」との声も出始めた。
 与党内には「雇用三法案を参院選の争点にしたい」との思惑も見え隠れする。同法案は「働く人の待遇改善につながる」と参院選のアピール材料にしやすいためだ。同法案の審議が難航しても「野党に『格差是正に反対する抵抗勢力』とのレッテルを張れば、かえって選挙が戦いやすくなる」との読みがある。
 一方の社保庁改革法案は「選挙間際まで引きずれば年金論議に飛び火しかねない」との懸念が根強い。民主党は歳入庁設置法案を提出して政府・与党の年金改革の不十分さを突く構え。自民党幹部は「いくら選挙でも、負担軽減や給付増など国民受けすることばかりは言えない」と漏らす。
(平成19年4月19日付日本経済新聞朝刊から)

いやはや。「労働国会」はどこに行ってしまったのでしょう。