ホワイトカラー・エグゼンプションは賃金抑制策か

Q.企業は人件費コストを抑制して利益を増やそうとするものだから、ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)もしょせんは賃金抑制策に決まっていると思うのですが。

たしかに、企業が人件費コストを抑制しようとするのは当然のことです。問題はその方法です。
WEが一部のマスコミが喧伝しているように「残業代をゼロにして人件費を削減する」という施策ではないことは以前のエントリでも書きました。むしろ、従来の残業代に見合う金額プラスアルファくらいの「WE手当」を支給することで年収要件を満足させるという対応をとる企業がほとんどでしょうから、どちらかといえば制度導入によって人件費総額は一時的に増える企業がほとんどではないかと思われます。WEの年収要件は、一部マスコミはあたかもそれ以上の人はそこまで引き下げられるかのように報じていますが(これは経団連が400万円という低すぎる数字を出したことも大きいのですが)、現実には年収要件が最低保障される制度だと考えるほうが実態に合っていると思われます。
いっぽうで、これまで多くの日本企業では、生産性を向上させ、その成果の全部ではなく一部を労働条件改善に振り向けるという形で、人件費コストの抑制と雇用の確保・拡大、労働条件の維持改善を両立させてきました。WEの導入も、そういった考え方に立つものですし、そうでなければ意味がありません。WE導入によって、対象者が時間管理に煩わされずに思う存分働けるようになり、よりよい成果をあげたり能力を高めたりすることによって生産性が向上すれば、WE導入にともなう一時的な賃金総額の増加(企業の「持ち出し」)も十分取り返しておつりがくる、と考えられますし、そう考えられないのであればWEを導入する意味はないということになるでしょう。